歯の破折(読み)はのはせつ(英語表記)fracture of the tooth

日本大百科全書(ニッポニカ) 「歯の破折」の意味・わかりやすい解説

歯の破折
はのはせつ
fracture of the tooth

外力などによって歯の硬組織(エナメル質、セメント質、象牙(ぞうげ)質)が折れたり割れたりすることをいう。歯の破折には、病的破折と外傷性破折とがある。また、その位置によって歯冠破折歯冠とは表面がエナメル質で覆われ、口腔(こうくう)内に露出している部分)、歯根破折、およびその複合型に分けられる。病的破折は、正常な歯では破折をおこさない程度の咬合(こうごう)力によって生じるもので、その原因としては、大きなう蝕(しょく)(むし歯)、インレー充填(じゅうてん)などがあげられる。外傷性破折には、交通事故、転倒打撲殴打、スポーツ外傷といった直接的、間接的外力によって生じるものと、強すぎる咬合圧によって生じるものとがある。外傷性破折は、単独のほか、顎骨(がくこつ)骨折に併発してみられ、上下顎前歯部に多い(とりわけ上顎前歯部に好発する)。また、外傷性破折は、活動的な幼児や学童などの若年者多くみられる。症状としては、破折片の動揺、歯冠の異常運動、歯冠の着色、歯質欠損、疼痛(とうつう)などがあるが、破折の状態に応じて異なってくる。

 歯冠破折は、多くは一歯に限定され、歯の脱臼(だっきゅう)を伴うことが多い。歯冠破折には亀裂(きれつ)から破折までさまざまなものがある。亀裂が深くて歯髄にまで達し、さらに歯質欠損によって歯髄が開放されると歯髄炎を併発する。こうした場合は、う蝕治療に準じた処置がとられる。歯根破折、あるいは歯頸(しけい)部(歯冠と歯根の移行する部分)の破折では、抜歯適応となることが多い。

[矢﨑正之]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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