島尾敏雄(としお)の長編小説。冒頭の章を1960年(昭和35)9月『群像』に発表して以後7年かけ76年に完成し、77年新潮社刊。作風は私小説的であり、作者と妻の名がトシオ、ミホと実名で登場する。夫に愛人がいることを知った妻は嫉妬(しっと)と妄想のため家出を繰り返し、ときには夫につかみかかり、その果て強度のノイローゼになる。また作家である夫は妻の妄執と嫉妬に悩まされ、仕事に行き詰まり生と死の深淵(しんえん)に向かい合い、極限状況を彷徨(ほうこう)する。その果て妻は精神病院の入退院を繰り返す。このような自然主義風の題材を本源的に描くことによって、夫婦のあり方、家庭、日常性を鋭く問う。なお題名は聖書から得たものであり、作品のテーマを暗示している。読売文学賞受賞。
[松本鶴雄]
『『死の棘』(新潮文庫)』
一月五日ごろから二月二、三日ごろの、小寒、大寒合わせた約三〇日間。寒中(かんちゅう)。《 季語・冬 》[初出の実例]「寒(カン)の中 薬喰 声つかふ 酒作 紅粉(べに) 門垢離(かどごり)」(出典:俳...