死の棘(読み)しのとげ

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

死の棘
しのとげ

島尾敏雄(としお)の長編小説。冒頭の章を1960年(昭和35)9月『群像』に発表して以後7年かけ76年に完成し、77年新潮社刊。作風は私小説的であり、作者と妻の名がトシオ、ミホと実名で登場する。夫に愛人がいることを知った妻は嫉妬(しっと)と妄想のため家出を繰り返し、ときには夫につかみかかり、その果て強度のノイローゼになる。また作家である夫は妻の妄執と嫉妬に悩まされ、仕事に行き詰まり生と死の深淵(しんえん)に向かい合い、極限状況を彷徨(ほうこう)する。その果て妻は精神病院の入退院を繰り返す。このような自然主義風の題材を本源的に描くことによって、夫婦のあり方、家庭、日常性を鋭く問う。なお題名は聖書から得たものであり、作品のテーマを暗示している。読売文学賞受賞。

[松本鶴雄]

『『死の棘』(新潮文庫)』

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デジタル大辞泉プラスの解説

死の棘

1990年公開の日本映画。英題《The Sting of Death》。監督・脚本小栗康平原作:島尾敏雄、撮影:安藤正平、録音西崎英雄。出演:松坂慶子、岸部一徳、松村武典、近森有莉、木内みどり平田満、浜村純ほか。カンヌ国際映画祭審査員グランプリ受賞。第45回毎日映画コンクール日本映画優秀賞、録音賞受賞。第14回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞(松坂慶子)、最優秀主演男優賞(岸部一徳)ほか受賞。

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デジタル大辞泉の解説

しのとげ【死の棘】

島尾敏雄の長編私小説。昭和35年(1960)「群像に冒頭部分を発表。以後、「文学界」「新潮」などに断続的に連載したのち、昭和52年(1977)に長編小説として刊行浮気から狂気に陥ったとの生活を赤裸々に描く。昭和36年(1961)に芸術選奨、昭和52年(1977)読売文学賞、昭和53年(1978)日本文学大賞をそれぞれ受賞。小栗康平監督による映画化作品はカンヌ国際映画祭で審査員グランプリを受賞した。

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