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母音交替 ぼいんこうたいvowel gradation; Ablaut; apophony

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

母音交替
ぼいんこうたい
vowel gradation; Ablaut; apophony

一般に印欧語比較文法の術語として用いられ,同語源に属する形態素にみられる音節主音の交替をさす。印欧祖語では造語法上・形態論上の重要な機能を果していた。現代英語の sing~sang~sung,songはその反映である。通例,母音交替には質的母音交替 (ギリシア語 légō~lógosのようなe~o交替) と量的母音交替 (e~ē; ei~i; eu~u; ē,ā,ō~əなど) があるとされ,また階程により,延長階程,基礎 (強) 階程,弱階程 (低減階程とゼロ階程) に分けられる。動作者を示す接尾辞-terを例にとれば-tēr~-tōr (延長) ,-ter ~-tor (基礎) ,-t (低減) ,-tr (ゼロ) である。ギリシア語の「父」 (主格・単数) ,patér-a (対格・単数) ,patrá-si (<t,与格・複数) ,patr-ós (属格・単数) を参照。ただし,延長階程はあとから2次的に発達したものであり,これを除いて祖語の母音交替を音韻論的に整理すると,結局e~o~ゼロの一つの型にまとめられる。交替は祖語の古い時代に生じたもので,その原因はアクセントがからんでいると考えられているものの,なお未解決の問題を残している。いずれにしろ,元来は文法的機能をもたないまったく音声的な交替であったものが,その交替条件の消失とともに文法的機能をもつようになったと考えられる。転じて広く,インド=ヨーロッパ語族の諸言語以外における母音の交替現象に対しても母音交替という名称が用いられている。このときの英語は普通,vowel alternationが用いられる。

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デジタル大辞泉の解説

ぼいん‐こうたい〔‐カウタイ〕【母音交替】

インド‐ヨーロッパ諸語の特徴の一つで、文法機能や品詞の変化に応じ、同一語根や接尾辞における母音が別の母音と規則的に交替すること。例えば、英語のsing, sang, sungの類。アプラウト

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大辞林 第三版の解説

ぼいんこうたい【母音交替】

一つの語根中の母音が、文法機能や品詞の変化に応じて、音色や長さの違う別の母音と交替すること。インド-ヨーロッパ諸語に特徴的で、英語の tooth(「歯」の単数形)―teeth(複数形)、sing(「歌う」の現在形)―sang(同過去形)―sung(同過去分詞形)などがその例。また、日本語の、フネ―フナ(舟)、シロ―シラ(白)、カルシ―カロシ(軽)などについてもいう。アプラウト。

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世界大百科事典内の母音交替の言及

【母音変化】より

…ところが末位の複数語尾/i/が前の母音/oː/を/eː/に変質させたので,中世英語では/feːt/となり,これが現代では[fiːt]に推移した。こうした名詞の単数形と複数形との間に見られる母音交替を〈ウムラウトUmlaut(母音変異)〉と呼んでいる。これは後の前舌母音/i/が前の後舌母音/o/を前舌母音e/に変えた逆行同化の例である。…

※「母音交替」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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