改訂新版 世界大百科事典 「水素化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説
水素化ナトリウム (すいそかナトリウム)
sodium hydride
化学式NaH。灰色の結晶性粉末。立方晶系岩塩型構造。典型的な食塩型水素化物で,Na⁺とH⁻(水素化物イオン)から成るイオン格子を形成している。比重0.93。屈折率1.470。生成熱12.8kcal/mol。高温でナトリウムと水素とに分解する。水素の解離圧は425℃で1気圧。乾燥空気中では安定。湿った空気によって分解し,水と激しく反応して水素を発生し,水酸化ナトリウムを生ずる。ベンゼン,二硫化炭素,四塩化炭素,液体アンモニアに不溶。酸と反応し,水素を放出して対応する酸のナトリウム塩を与える。高温でアンモニアと反応し,水素を発生してナトリウムアミドNaNH2を生ずる。二酸化硫黄,二酸化炭素とは高温で反応する。還元性が強く,金属酸化物,塩化物から金属を遊離する。三フッ化ホウ素BF3と反応して,フッ化ナトリウムとジボランB2H6を生ずる。
界面活性剤を添加した高沸点の鉱油中に金属ナトリウムを懸濁させ,これに水素を通じてつくる。生成物はヘキサンで洗浄し,窒素気流中で乾燥する。金属ナトリウムと水素とを高温で直接反応させても得られる。金属塩化物の還元剤,有機合成における還元剤,水素添加剤,縮合剤などに用いられる。湿気を遮断し,乾燥した窒素ガスとともに密閉容器中に保存する。
執筆者:藤本 昌利
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報