改訂新版 世界大百科事典 「フッ化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説
フッ(弗)化ナトリウム (ふっかナトリウム)
sodium fluoride
化学式NaF。俗にフッ化ソーダとも呼ばれる。無色の立方または正方晶系の正六面体または八面体結晶。岩塩型構造。融点993℃。沸点1704℃。比重2.79。屈折率1.3258。水100gへの溶解度は4g(0℃),5g(100℃)で,カリウム塩KFに比べて著しく低い。エチルアルコールに微溶。水溶液は加水分解のためアルカリ性を呈し,ガラスを侵す。
NaF+H2O⇄NaOH+HF
乾いたフッ化ナトリウムはガラスを侵さない。フッ化水素酸に溶けてフッ化水素ナトリウムNaHF2を生ずる。NaHF2は無色三方晶系の菱面体結晶。270℃でフッ化水素を放って分解する。
NaHF2─→NaF+HF↑
この反応は高純度の無水フッ化水素の製造に利用できる。
水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウムをフッ化水素酸と中和させてつくる。工業的には,氷晶石Na3AlF6を水酸化ナトリウムと共融するか,蛍石CaF2,炭酸ナトリウム,硫酸ナトリウムの混合物を炭素とともに融解し,水で抽出,濃縮して晶出させる。木材防腐剤ほか各種の防腐剤,発酵工業における殺菌消毒剤とされる。虫歯予防剤として,2%水溶液を直接歯に塗布,またはごく微量(1ppm程度)を飲料水に添加することもある。
結晶粉末は粘膜を刺激し,神経系統を侵し,有毒。フッ化物濃度の高い天然水(酸性泉,酸性河川水に多い。いわゆる毒水(どくすい))は,歯のリン灰石構造中のOH⁻をF⁻でイオン交換し,斑状歯を生ずる原因となるため,飲用してはならない。水溶液はガラスを侵すため,ポリエチレン容器に保存する。
執筆者:藤本 昌利
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報