有機化合物における多重結合に水素を付加させる反応の総称で,還元反応の一つ。多重結合としては,C=C,C≡Cのほかに,C=O,C=N,C≡N,N=Nなどがある。これらの不飽和結合を水素添加する方法としては,(1)金属水素化物を用いる,(2)触媒の存在下で水素ガスを作用させる,(3)その他の方法,が使われるが,通常,水素添加ということばが使われる場合,(2)の方法を指すことがほとんどである。(1)の方法ではC=C結合を水素添加することは困難であるが,C≡C,C=O,C=N,C≡Nなどの場合は,水素化アルミニウムリチウムLiAlH4などのアルミニウム系還元剤または水素化ホウ素ナトリウムNaBH4などのホウ素系還元剤で水素添加できることが多い。しかし,これらの方法は試剤が高価なうえに,C=C結合への水素添加が不可能なので,工業的にはもっぱら(2)の触媒による水素添加の方法が用いられる。触媒としては,パラジウムPd,白金Pt,ロジウムRh,ニッケルNi,コバルトCoなどが単体として,あるいは有機溶媒に溶けやすいように錯体として用いられる。たとえば,シクロヘキセンを白金黒の存在下,室温,760Torr(常圧)で水素ガスと反応させると,定量的にシクロヘキサンが得られる。
この場合,白金黒は触媒として作用しているので,何回でも繰り返し使用でき,C=O結合はC=Cより還元されにくい。この種の反応は,分解ガソリンの品質改善,ジイソブチレンまたはブチレン共重合体からのイソオクタンの製造,アセチレンのエチレンへの部分水素添加などに利用される。また,食品工業関係では,不飽和脂肪酸の水素添加によるマーガリン原料の製造などに使われている。芳香環の水素添加は通常Pd,Ptなどを触媒にすると高温・高圧の激しい条件が必要であるが,Rhを用いると常温・常圧でも可能となる場合が多い。このような接触水素添加(触媒による水素添加)反応では,2個の水素が不飽和結合に対して同方向から導入される(シス付加)。また,下に示すような有機溶媒に可溶な触媒も開発され,均一系水素添加触媒として最近では汎用されている。
最近では次に示すように,不斉触媒を用いて光学活性なアミノ酸を合成する研究が盛んである。
執筆者:友田 修司
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