日本大百科全書(ニッポニカ) 「水術」の意味・わかりやすい解説
水術
すいじゅつ
武芸の一つ。水泳の古称、日本泳法の古称としても使用されている。日本で水泳は古くから行われていたが、日本の水泳術は水軍から発達したのではなく、陸戦の必要上から水泳を鍛錬したと考えられる。
水泳が武芸の水術として深く研究され始めたのは、江戸幕府が成立した17世紀の初めごろからであり、現在行われている流派の泳ぎが流派として確立されたのも江戸期になってからである。初期の水術では体系的な指導が行われていなかったが、時代とともに専門的な指導者によってしだいに一定の主張、形が決まり、指導法もまとまって流派として発展していった。流派はさらに支流、亜流を生み出し、多くの流派へと発展していった。
流派の当時の最高有力者がその本流という意味で家元となり、流名がおこった。家元の継承は一子相伝、高弟継承、血脈高弟混合の継承が行われていた。水術が武術として成立するために、水中での武器の操作や、馬を御することも要求された。
現在まで伝えられ認められている流派は12流で、多くは国替(くにがえ)のない大藩の庇護(ひご)によって存続していった。各流派によって基本の泳ぎは扇足(あおりあし)、踏足(ふみあし)(立体、立泳)、蛙足(かえるあし)と異なっている。
[笹島恒輔]