水を用いて種々のからくりを見せる見世物の一種。水からくり。水を利用した仕掛物は,すでに寛文期(1661-73)から行われている。1729年(享保14)の夏に,京都四条河原で〈臥竜竹(がりゆうちく)〉と称されて見世物に出たのもその一種で,水槽の中に枝葉のある青竹を植え込み,青竹から絶えず水を噴出しているが,それによって水槽の水が少しも増減しないという精巧さで人々を驚かせたという。1806年(文化3),名古屋で水からくりがあり,銚子,果物,たばこ盆,きせる,壺,刀の身などいろいろな物から水を噴射させて〈奇観〉と称されている。この手法は歌舞伎や人形芝居に採り入れられて数々の名場面を生み,また手品として行われるようにもなった。その仕掛けは,多くは細い管をどこかに配してあるといった単純なものであるが,その華麗な舞台面から,主として女芸人のものとなり,明治末から昭和にかけて奇術の女王と称された松旭斎天勝(しようきよくさいてんかつ)も得意とした。また,泉鏡花の《滝の白糸》(《義血俠血》)は,水芸の太夫白糸を主人公としている。
執筆者:織田 紘二
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本物の水を用いて行う奇術や曲芸の総称。水からくりともいう。精密な細工や仕掛けで人形などを遣う水からくりの見世物は、寛文(かんぶん)期(1661~73)から竹田からくりの一座などによって行われていた。1806年(文化3)名古屋の大須(おおす)で興行された水からくりは、銚子(ちょうし)、果物、たばこ盆、壺(つぼ)、刀などから水を噴射させる奇観で人々を驚かせた。その方法は、細い管を舞台袖(そで)から演者の手元足元を通して品物に通じておき、口上や音曲にあわせて裏で水栓を開けたり閉めたりしたものであった。これらの手法は歌舞伎(かぶき)や人形芝居にも取り入れられた。明治末には奇術師の初代松旭斎天勝(しょうきょくさいてんかつ)も水芸を売り物にした。新派の演目『滝の白糸』では、この水芸の場を見せ場の一つにしている。
[織田紘二]
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