氷河に起因して生じた湖の総称。氷河流動に伴う氷食作用による湖をとくに氷食湖とよぶこともある。谷氷河谷頭(こくとう)の圏谷湖もこれにあたる。また、谷氷河が地質の弱線を選択的に氷食した結果、氷河が後退すると小湖が谷沿いに点々と残ることがある。ロザリオの念珠(ねんじゅ)の連想からこれらは「主の祈りの湖」とよばれ、氷食湖として知られる。
アルプス山麓の高原状の緩傾斜地に谷氷河が残した湖水面積500平方キロメートルを越えるレマン湖(最大水深310メートル)とボーデン湖(最大水深252メートル)が広がっている。これらの深くて広い氷河湖の湖盆形成には、氷河の下方侵食に加えて、氷河が生成した岩屑(がんせつ)である氷堆石(フランス語のモレーンmoraine)が堆積した側堆積丘(そくたいせききゅう)や末端堆積丘の塞あげによる寄与が大きい。
低高度の露岩地域を流れた谷氷河が残した広いU字谷に湛水(たんすい)した湖をフィヨルド湖(峡湖)という。スコットランドのネス湖がこれにあたる。海岸に近いU字谷が氷食作用により海面下まで侵食され、海が進入したものをフィヨルド(峡湾)という。氷床が後退するときに多量の融氷水と堆積物が供給され、その周辺に大湖を残す。北米大陸の五大湖や北ヨーロッパの古バルト海の淡水湖などがこの例である。
[中尾欣四郎]
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…氷河が縮小,後退する過程を示す数列のモレーン丘が並列することも多い。谷氷河やカール氷河の末端モレーン丘の内側はややくぼんだ舌状盆地となり,湖水をたたえることもある(氷河湖)。氷河が伸張すると末端部の既存のモレーンやその他の堆積物を押し上げて小丘を形成することがある。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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