スイス南西部にあり,フランスとの国境をなすアルプス地方最大の湖。ジュネーブ湖とも呼ばれる。面積581.5km2で,この約40%がフランスに属する。東西方向に長い三日月形をなし,長さ72.3km,最大幅約14km,最大水深310m,湖面の標高375m。モレーンによってせき止められて形成された湖で,その水は濃青色をしており,透明度が高い。ローヌ川が湖の東部から流入して湖を貫流し,西端部から再び流出して,湖岸のジュネーブ市を流れる。ほかに南にドランスDranse川,北にブブエイゼVeveyse川などが流入する。南東をアルプス,北西をジュラ山脈の山々に囲まれたその風景の美しさは格別で,古来多くの人々にたたえられてきた。
湖岸にはジュネーブ,ローザンヌの国際都市が立地し,また,温暖な気候を反映して,モントルー,ブブエイ,トノンなどの世界的な保養地がある。湖岸はブドウの産地としても名高い。1823年の蒸気船の開通以来,湖上交通が盛んに行われている。
執筆者:武田 むつみ
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
スイス南西部、フランスとの国境にある湖。ジュネーブ湖ともよばれる。三日月形で、サボア・アルプスとジュラ山脈に挟まれたアルプス縁辺部最大の湖である。東西に長く、長さ72キロメートル、最大幅14キロメートル、面積581平方キロメートル。氷堆石(ひょうたいせき)による堰止(せきどめ)湖で、最大水深310メートル。湖面標高372メートル。ローヌ川が東端に流入、西端から流出し、年間200万立方メートルの土砂を湖底に堆積する。北岸のスイス側にはジュネーブ、ローザンヌ、モントルー、ブベーなど国際的保養地があり、気候温暖で南にアルプスを望む風光は明媚(めいび)である。北岸の南斜面は日射に恵まれて見渡す限りのブドウ畑となっており、スイスの中心的ワイン産地でもある。南岸はフランス領で、鉱水で有名なエビアンの町がある。湖上交通が発達し、両岸には鉄道・道路も通じ、アルプス山麓(さんろく)最大の観光地域となっている。
[前島郁雄]
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