氷河によって運ばれた堆積物や、それによってつくられた地形。モレーンmoraineまたは氷堆石(ひょうたいせき)ともいう。河川の堆積物とは異なり、水によるふるい分け(淘汰(とうた))を受けていないため、粘土などの細粒物質中に大小の礫(れき)や巨大な岩塊が入り混じった無淘汰・無層理の乱雑な堆積物からなることが多い。また堆石中の礫には、氷河によって谷底の岩盤に押し付けられて特定の面が削られたり、表面に傷(擦痕(さっこん))をつけられたりした氷食礫も多い。氷河は運んできた堆積物をブルドーザーのように末端に押し出すので、氷河の末端に端堆石(終堆石。エンド・モレーンend moraineまたはターミナル・モレーンterminal moraine)とよばれる土手状の細長い丘ができる。これらは氷河の側方に伸びて側堆石(サイド・モレーンside moraineまたはラテラル・モレーンlateral moraine)となる。また二つの谷氷河が合流すると、それぞれ内側にあった側堆石が一つになり、合流した氷河の中央部に中央堆石(メディアル・モレーンmedial moraine)をつくる。氷河が融(と)け去るとこれらはいずれも細長い丘として残るので、地形をさす場合には堆石堤(てい)ということばも用いられる。
端堆石堤や側堆石堤に囲まれた部分には、氷河の底を運ばれてきた堆積物が低い不規則な凹凸をつくってたまっており、これを底堆石(グラウンド・モレーンground moraine)という。堆石堤の位置や堆石の分布から、かつて氷河がどこまで拡大していたかを復原することができる。しかし堆石は、一般にまだ固まっていない粘土と礫の入り混じった堆積物であるから、流氷や崩壊によって消失することが多く、現在みられる堆石の大部分は、約1万年前に終わった最終氷期と、完新世(沖積世)の小氷期にできたものである。氷床の末端にできる堆石は規模が大きく、3000キロメートル以上も追跡できることがあり、ロシアのモスクワ郊外のバルダイ丘陵のような広い丘陵をつくることもある。日本アルプスや日高(ひだか)山脈に分布するカール(圏谷(けんこく))の底や氷食谷では、かつての山岳氷河による新旧の堆石がみられる。
[小野有五]
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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