油濁損害賠償保障法(読み)ゆだくそんがいばいしょうほしょうほう

改訂新版 世界大百科事典 「油濁損害賠償保障法」の意味・わかりやすい解説

油濁損害賠償保障法 (ゆだくそんがいばいしょうほしょうほう)

船舶から流出し,または排出された油によって油濁損害が生じた場合における船舶所有者の責任を明確にし,および油濁損害の賠償を保障する制度を確立することにより,被害者の保護を図り,あわせて船舶による油の海上輸送の健全な発達に資することを目的として制定された法律(1975公布)。〈油濁損害に対する民事責任に関する国際条約〉(1969),と〈油濁損害の補償のための国際基金の設立に関する条約〉(1971)を批准し,これを国内法化するための法律である。1967年に英仏海峡において発生したトリー・キャニオン号事件海洋汚染)は,巨大なタンカーによる油濁事故の重大性を世間に認識させ,両条約が成立した。その後,1992年に両条約を改正する議定書が採択され,日本はこれを批准して,本法の必要な改正を行った。

 本法によれば,ばら積みの油の輸送の用に供している船舶から流出し,または排出された油による汚染により生じた損害,および損害防止措置の費用とこれによる二次的損害について(2条6号),その油が積載されていた船舶の所有者は,その損害を賠償する責に任ずる(3条)。この責任は,船舶所有者だけに集中しており,船舶賃借人や船長その他の船員には及ばない(3条4項)。そして,戦争若干免責事由は認められる(3条1項)が,無過失責任に近い,厳格責任とされている。他方,船舶所有者は,損害が自己の故意により,または損害の発生のおそれがあることを認識しながらした自己の無謀な行為により生じたものでない限り,その責任を一定限度に制限することができる(5条)。また,賠償義務を確保するために,2000tを超えるばら積みの油の輸送の用に供する船舶については,油濁損害賠償保障契約(主として責任保険)の締結が強制されている(13条)。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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