日本大百科全書(ニッポニカ) 「沼野石」の意味・わかりやすい解説
沼野石
ぬまのせき
numanoite
ホウ酸塩鉱物の一つ。2007年(平成19)に当時岡山大学大学院生であった大西政之(まさゆき)らによって岡山県高梁(たかはし)市布賀(ふか)鉱山(閉山)から発見された新鉱物。ボルカライトborcarite(化学式Ca4Mg[(CO3)2|B4O6(OH)6])のMg(マグネシウム)のCu2+(銅)置換体に相当する。本鉱物の発見まではボルカライトが系統分類上単独の地位にあったが、本鉱の発見後ボルカライト系が確立されることとなる。自形は平行四辺形の輪郭をもつ単斜立体でボルカライトと化学組成上不連続な累帯構造をなす。
原産地では石灰岩の再結晶作用によって生成された大理石を貫く割れ目の中に産し、ボルカライトのほか、ニフォントフ石nifontovite(Ca3[B3O3(OH)6]2・2H2O)、バルトフォンテイン石bultfonteinite(Ca2[F|SiO3OH]・H2O)、方解石と共存する。現在までに原産地以外からは報告されていない。同定は帯灰青緑色の外観と透明感による。条痕(じょうこん)はわずかに着色する。板状の形態と二方向の完全な劈開(へきかい)をもつ。命名は岡山大学名誉教授沼野忠之(ただゆき)(1931―2001)にちなむ。
[加藤 昭 2018年5月21日]