ことわざを知る辞典 「泥棒を見て縄を綯う」の解説
泥棒を見て縄を綯う
[使用例] 『未開人の数学』という小著を公にしたので、それがお目にとまってのご用命らしい。しかしこれとて某処から講演を頼まれて、泥棒を見てなんとやら式に調べまわったあげくの果てに作り上げたものであって[矢野健太郎*大工の数学|1943]
[使用例] そういう雰囲気や気配はこちらだって感じないわけではないから手術死の事態を予想して急いで安心立命の境地に到達しなければならなかった。しかし泥棒を見て縄をなうの諺どおり平生、身を入れていないことが一夜にしてできるはずはない[遠藤周作*異邦人の立場から|1990]
[解説] 「泥棒を捕らえて縄を綯う」ともいい、江戸時代には「泥棒」を「盗人」とする形のほうがよく使われていました。しかし、幕末頃から「泥棒を~」の形がしだいに増え、「盗人」というのはやや古い感じがするようになりました。また、現代では、短縮形の「泥縄」が多用され、「泥縄式に」などと応用することもあります。
泥棒をみつけてから縛る縄を綯いはじめたのでは、いかにも間のぬけた話ですが、戯画的に誇張することによって、日頃の対策がまったく不十分だったことを鋭く批判し、問題が発覚した後の対応も場当たり的で根本的な解決にほど遠いことを示唆しています。なお、用法としては、他者を批判するほか、みずから謙遜して認めたり、対応が不十分なことの言い訳にすることもあります。
[類句] 戦見て矢を矧ぐ
[対義] 転ばぬ先の杖
〔中国〕臨渇掘井(のどが渇いてから井戸を掘る)
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