日本大百科全書(ニッポニカ) 「洞窟葬」の意味・わかりやすい解説
洞窟葬
どうくつそう
死者を洞窟内に葬る葬法。ヨーロッパの中期旧石器時代にはすでに行われていた。この時代には、生きている人々も洞窟で生活を営んでいたが、死者が出ると、それまで住んでいた洞窟を死者にゆだねて、生者は別の洞窟に移り住んだらしい。古代エジプトでも洞窟葬が行われていた。東南アジア地域では、ルソン島、ボルネオ島、セレベス島および東部インドネシアの島々、中国南西部のケラオ族などが洞窟葬を行うことがあるが、複葬の最後の段階であることが多い。また、人工の洞窟、壁龕(へきがん)に死体を納める形式は、アフリカに多く、オーストラリアでも行われている。日本では、自然の洞窟を利用して埋葬した例もわずかにあり、弥生(やよい)時代後期から古墳時代にかけての事例がみられるが、これは複葬の一段階であったと考えられる。また、奄美(あまみ)や沖縄の島々でも最近まで洞窟に人を葬っていた。これも、多くは複葬の一部であった。
[清水 純]