海運事業者などの委託をうけ、海事関係法令に基づく申請、届出、登記などの手続や書類作成の代行が認められる国家資格。海事代理士法(昭和26年法律第32号)に基づく専門性の高い国家資格で、いわゆる士業の一種である。年1回実施される海事代理士試験に合格し、海事代理士として登録する必要がある。「海の司法書士」「海の行政書士」などといわれる。人命の安全と船舶の堪航(たんこう)性を確保するため、(1)小型船舶操縦免許証や海技免状などの資格申請・更新、(2)救命・無線設備や定期検査など船舶安全法に基づく申請・更新、(3)船舶の登録・登記の申請、(4)船員資格、船員の募集・雇入れ、船員就業規則などの労働関係の申請・更新、(5)安全管理規程の作成など内航海運業法に関する届出・登録、(6)シップリサイクル条約に規定された船舶内の有害物質一覧表(インベントリ)の作成、などの手続を代行する。船主らの相談に応じて適切な助言をし、必要な調査をする役割も担っている。2020年(令和2)2月時点で資格登録者は2152人で、2021年3月末時点で一般社団法人日本海事代理士会に所属する海事代理士は383人。多くが港湾周辺で海事代理士事務所を開業している。士業のなかでは数がもっとも少ない。
明治政府が1908年(明治41)に創設した海事代願人制度が前身。戦後、日本国憲法発布に伴い、海事代理士法に基づく国家資格となった。海事代理士は業務上知り得た秘密を他に漏らしてはならない(海事代理士法19条)。海事代理士でない者が海事代理士法に規定した行為を行った場合には、6か月以下の懲役または2万円以下の罰金が科される(同27条)。
[矢野 武 2022年9月21日]
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