行政書士法(昭和26年法律第4号)に基づき、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務または事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む)を作成することなどを業とする者をいう。もともとは代書人として、官公署に提出する許認可の申請書の代筆業から出発したが、今日では、開発許可、廃棄物処分場の許可、建設業の登録や定期的に要求される書類の提出、外国人の在留許可など、行政相手の法律手続のプロであるほか、民事上でも契約書の作成、内容証明などを行っている。さらに、行政手続法の定める聴聞・弁明手続の代理、契約書類などの代理作成もできるようになった。ただし、「事件」つまり紛争となれば、弁護士法第72条により弁護士の独占業務であるので、訴訟代理はもちろん、和解、交渉などもすることができない。
行政書士試験研究センターが毎年1回行う行政書士試験に合格した者のほか、弁護士、公認会計士、弁理士、税理士の資格を有する者、および公務員(あるいは特定独立行政法人や特定地方独立行政法人の役員または職員)として、高卒であれば通算17年間以上行政事務を担当した者は行政書士となる資格を有するが、開業するには、開業する都道府県の行政書士会を経由して日本行政書士会連合会に登録しなければならない。行政書士の報酬は、以前は行政書士会の会則で定められていたが、現在は規制緩和され、その事務所の見やすい場所に報酬の額を掲示しなければならない、となっているだけである。
[阿部泰隆]
他人の依頼を受け報酬を得て,官公署に提出する書類その他権利義務または事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む)の作成並びに提出手続・書類作成を代理すること等を業とする者。その業務や資格等は行政書士法(1951公布)が定めている。作成する書類の例としては,法人設立関係の書類のほか,建設業許可申請,農地転用許可申請,風俗営業・旅館業許可申請,帰化申請,新規車両登録申請,旅行業登録申請などに関する書類があげられる。官公署に提出する書類の作成でも,他の職業の独占業務とされているもの(たとえば弁護士,税理士,司法書士等の業務)を行うことはできない。労働および社会保険に関する諸法令に基づいて行政機関等に提出する書類の作成代行は社会保険労務士の業務であるが,1980年9月1日,改正法の施行の際に行政書士会に入会している行政書士は,当分の間この業務を行うことができる。行政書士会に入会している行政書士でない者は,業として行政書士の業務を行うことはできない。弁護士・弁理士・公認会計士・税理士となる資格を有する者,公務員として通算20年(高校を卒業している者は17年)以上行政事務を担当した者は無試験で行政書士となる資格を有するが,それ以外の者は都道府県知事が総務大臣の委任を受けて年1回以上行う行政書士試験に合格しなければならない。現実に開業するには,開業する都道府県の行政書士会を経由して日本行政書士会連合会に備えてある行政書士名簿に登録しなければならない。行政書士は正当な理由なく依頼を拒んだり,秘密を漏らしてはならないこと,常に帳簿を備えて保存することなどの義務を負い,都道府県知事による立入検査,業務の禁停止処分などの監督に服する。
執筆者:阿部 泰隆
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