改訂新版 世界大百科事典 「イシモチ」の意味・わかりやすい解説
イシモチ (石持)
Argyrosomus argentatus
スズキ目ニベ科の海産魚。頭骨内に炭酸カルシウムでできた大きな耳石(じせき)をもつためこの名がある。この耳石は体の平衡を保ったり,音を感じとる役目をしている。別名のシログチまたはグチは,本種がうきぶくろを用いてグーグーという大きな音を出すことに由来するが,これはとくに産卵時に顕著である。体は銀白色で,えらぶたに大きな黒斑があることが特徴であるが,ときにきわめて薄くなることもある。全長40cm余に達する。本州の東北南部以南,東シナ海からインド洋まで広く分布し,水深40~100mの砂泥底にすむ。多毛類,甲殻類,貝類などの底生動物を好んで食べる。成長は地域によって異なるが生後2年で体長20cmくらいになる。産卵期は5~8月で,5万~60万粒の卵を産む。底引網で漁獲され,おもにかまぼこの材料にされる。釣師が岸から釣る魚で〈イシモチ〉というのは,ほとんど近縁種のニベのことであり,イシモチはやや沖寄りにすむため岸からはほとんど釣れない。
執筆者:望月 賢二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報