モロコ
もろこ / 諸子
硬骨魚綱コイ目コイ科のイトモロコ属Squalidusとタモロコ属Gnathopogonに含まれる淡水魚の総称。5種が知られ、全長6~15センチメートル程度。側線は完全で、体側中央を直走している。いずれも1対のひげをもつが、種によって長短がさまざまである。そのためか、ひげをもたない小形の遊泳性淡水魚にも、××モロコの地方名でよばれているものが多い。
イトモロコ属には次の3種がある。イトモロコSqualidus gracilisは、木曽(きそ)川、江の川(ごうのかわ)以西の本州、四国、九州と朝鮮半島、中国に分布し、全長5~7センチメートルの小形魚。側線鱗(そくせんりん)が背腹方向に著しく長い。雑食性で、川の緩流部に群生している。デメモロコS. japonicusとスゴモロコS. biwaeは、形態と生態が酷似しているが、前者のほうが頭が大きく、体高がやや高い。両者が共存している所ではこの相違は比較的明瞭(めいりょう)であるが、単独生息地での頭長比や体高比は互いに接近する傾向があり、誤認しやすい。木曽川、淀川(よどがわ)両水系の両者が天然分布であることは確実のようであるが、他地域での記録には再検討を要するものが含まれている。3種とも食用にされている。
タモロコ属の2種は、別項の「タモロコ」を参照されたい。
[水野信彦]
小魚なので骨ごと食べることができる。子持ちモロコは川魚のなかでもとくに賞味される。白焼きにしたものは二杯酢や酢みそをつけて食べる。から揚げ、照焼き、佃煮(つくだに)、南蛮漬け、みそ焼き、フライなど利用範囲が広い。白焼きしたモロコを芯(しん)にした昆布(こぶ)巻きもよい。琵琶湖(びわこ)のモロコの飴煮(あめに)は特産品として有名である。
[河野友美]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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モロコ (諸子/
)
モロコとは諸々の子(もろもろのこ),すなわち小型の雑魚の意と解される。事実,和名でも方言でもモロコの名のつくものはコイ目コイ科のうちで体の細長い小魚を指すものが大部分である。単にモロコという和名の魚はない。方言のモロコは地方によりその指す魚の種類が異なる。琵琶湖沿岸ではホンモロコのことで,モロコ釣り,モロコ曳(引)き(網)などという使い方をする。したがって京阪神で〈琵琶湖のモロコ釣り〉などという場合も含まれる。琵琶湖と無関係の地域,たとえば関東地方(移殖)や関西でも養魚池などではタモロコを指す場合が多い。
和名で〈何々モロコ〉と呼ぶ魚は日本産ではタモロコ属Gnathopogon(タモロコ,ホンモロコ),スゴモロコ属Squalidus(スゴモロコ,デメモロコ,イトモロコ),カワバタモロコ属Hemigrammocypris(カワバタモロコ),ヒナモロコ属Aphyocypris(ヒナモロコ)がある。
地方名でモロコがつく魚はイシモロコ(モツゴ),スジモロコ(タモロコ),ドロモロコ(ツチフキ)などがある。
海産のスズキ目ハタ科の大型魚(例,クエなど)をモロコと呼ぶ場合がある。静岡県の伊豆半島の地方名が現在では一般の釣人の間に普及している。
執筆者:中村 守純
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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モロコ
モロコとは〈諸々の子〉の意。コイ科の魚で体の細長い小魚にこの名のつくことが多い。単にモロコという和名の魚はいない。琵琶湖周辺ではホンモロコをいい,東京(特に釣人の間)ではタモロコをいう。ホンモロコは全長9cm程度。琵琶湖・淀川水系の特産で,現在は諏訪湖,山中湖,関東地方の川に移殖され繁殖している。冬きわめて美味で,琵琶湖の名物。絶滅危惧IA類(環境省第4次レッドリスト)。タモロコは全長7cm程度。静岡・新潟県以西の本州と,四国の一部,九州北部に分布。関東地方にも移殖されて繁殖している。美味。なお,伊豆半島などでハタ科のクエの成魚をいうこともある。
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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