日本大百科全書(ニッポニカ) 「イシガキダイ」の意味・わかりやすい解説
イシガキダイ
いしがきだい / 石垣鯛
spotted knifejaw
[学] Oplegnathus punctatus
硬骨魚綱スズキ目イシダイ科に属する海水魚。北海道から九州南岸の太平洋と日本海各地、小笠原(おがさわら)諸島、屋久島(やくしま)、南西諸島、朝鮮半島南岸、台湾、黄海など西太平洋に分布する。体形は近縁種のイシダイによく似ており、体高は高く、強く側扁(そくへん)する。口は小さく、上顎(じょうがく)の後端は目の前縁下に達しない。歯は石灰質で固められ、あごの骨とともに嘴(くちばし)状となる。これは小さい歯が多数癒合してできたものである。鱗(うろこ)はきわめて小さい。背びれは12棘(きょく)15~16軟条、臀(しり)びれは3棘13軟条で、両ひれの軟条部はいくぶん伸長する。体色はイシダイと異なり、大小の黒褐色斑紋(はんもん)が石垣状になり、体と垂直鰭(すいちょくき)に密に分布するほか、体側に黒色斑点が散在する。雄では成長すると石垣模様が消えるが、雌では残る。成長すると雌雄ともに吻部(ふんぶ)が白くなることから、シログチとよばれる。産卵期は春で、稚魚は流れ藻や流木につくが、全長4~5センチメートルになると流れ藻を離れ、海岸近くで生活する。全長15センチメートルくらいになると岩礁にすみつき、硬い歯でサザエ、アワビ、ウニ、フジツボ、カニなどをかみ砕いて食べる。最大全長は86センチメートルに達する。イシダイよりも南方に生息する。イシダイと同様に釣り上げるときに引きが強いので、磯釣りの対象魚として喜ばれる。洗い、刺身、煮つけなどにすると美味である。ときにはイシダイ、イシガキダイ両種の性質を備えた横縞(よこじま)と斑点の両方があるものがみられることがある。このような個体はイシダイの雌雄から生まれることもあり、またイシダイとイシガキダイの交雑によって生まれることもある。成長はイシダイよりも早いために、近畿大学でイシダイの雌との人工交雑が行われ、この雑種をキンダイと命名している。
[片山正夫・尼岡邦夫 2021年2月17日]