日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウミタナゴ」の意味・わかりやすい解説
ウミタナゴ
うみたなご / 海鱮
surfperch
[学] Ditrema temmincki
硬骨魚綱スズキ目ウミタナゴ科に属する海水魚。単にタナゴともよぶが、淡水魚のコイ目に属するタナゴ類とは遠縁である。北海道南部以南の日本各地および朝鮮半島南部の沿岸に分布する。全長約25センチメートルに達し、体は卵形でよく側扁(そくへん)する。卵胎生で、雌は初夏に約6センチメートルの稚魚を20~30尾ほど産む。雄は臀(しり)びれの後方部の軟条が著しく長いので雌と区別できる。岩礁域から内湾の藻場(もば)で群れをなして生活し、小形の貝類や甲殻類を好んで食べる。近縁種にアオタナゴD. viridisやオキタナゴNeoditrema ransonnetiがあり、ウミタナゴに比べて、前者は体色の青みが強く、ウミタナゴより内湾性である。後者は体色が暗褐色を帯び、北方性でウミタナゴより深所にすむ。塩焼きなどにされ美味である。
[井田 齋]
釣り
磯(いそ)や防波堤から釣る対象魚で、大物釣りと異なり、足場のよい磯で楽しめる。釣り期は地方によってずれがあるが、だいたい冬から春である。ウキ釣りがおもで、玉ウキ4、5個を等間隔につけたシモリ仕掛けが標準で、岩場の海溝や藻の多い所をねらう。波の静かな潮通しのよい場所は、小型の立ちウキもよい。群泳する習性から寄せ餌(え)が必要であり、寄せ餌はアミやイワシのミンチを海水と混ぜ、潮流に乗せるように少量ずつ投入する。鉤(はり)へつける餌(えさ)はジャリメ、ゴカイ、アオイソメ、大粒のアミ、生きたモエビなど。1尾釣り上げたら、すぐにまた寄せ餌を投入して、魚の群れを散らさないようにするのが好漁のこつである。餌は鉤に小さめにつけないと鉤掛りが悪い。
[松田年雄]