日本大百科全書(ニッポニカ) 「アイナメ」の意味・わかりやすい解説
アイナメ
あいなめ / 鮎魚女
鮎並
愛女
greenling
[学] Hexagrammos otakii
硬骨魚綱カサゴ目アイナメ科に属する海水魚。日本各地、朝鮮半島南部、黄海(こうかい)の沿岸に分布する。北海道ではアブラコ、東北地方ではアブラメとよぶところが多い。体側に5本の側線が走ること、尾びれを広げるとその後端が直線に近いことなどがこの種の特徴である。体色はすむ場所によって黄色、赤褐色など変化に富む。
産卵期は晩秋から冬で、この期の雄は橙黄(とうこう)色が濃くなり、雌と区別できる。卵は橙黄色や赤紫色で、粘着性が強い。約650~1万粒の卵を塊状に海藻や岩石に産み付ける。産卵後、雌は深みへ去るが、雄は卵が孵化(ふか)するまで保護する。奇妙なことに、ほかの個体の卵塊を食べる習性があり、このためにしばしば闘争がみられる。孵化した仔魚(しぎょ)は全長7.4ミリメートルぐらいで、浮遊生活をする。およそ半年で10センチメートルほどになり、沿岸の藻場(もば)に多数出現する。この期の稚魚は体が一様に青緑色になる。1年で15センチメートル、4年で30センチメートルぐらいに成育する。雄は1年、雌は2年で成熟する。成魚は普通、岩礁域にすみ、小形の甲殻類、カタクチイワシ、イカナゴなどを食べる。釣り、刺網(さしあみ)、かご、定置(ていち)網などで漁獲されるが、遊漁の対象として人気がある。
近縁種には、日本の各地に分布するクジメ、北海道以北にみられるスジアイナメ、ウサギアイナメ、エゾアイナメがある。クジメとスジアイナメとは、前述したアイナメの特徴との比較で容易に区別できる。エゾアイナメとは後頭部に皮弁があること、第1側線が背びれの後部近くまで達することなどで区別できる。
春夏に美味となり、大形のものは臭みが少ないので刺身にもされるが、多くは煮魚として賞味される。さっと湯がいて椀種(わんだね)、ちり鍋(なべ)の具として淡泊な風味が喜ばれ、照焼き、みそ漬け、粕(かす)漬けにも用いられる。刺身にするときには寄生虫に注意する必要がある。
[尼岡邦夫]