改訂新版 世界大百科事典 「浸透探傷」の意味・わかりやすい解説
浸透探傷 (しんとうたんしょう)
非破壊検査法の一つで,構造物や機械部品の表面にある欠陥に特殊な液体を浸透させて肉眼で発見しやすくする方法。磁気探傷も同様の目的のものであるが,浸透探傷は磁性体である必要はなく,金属だけでなくプラスチック,セラミックスにも応用される。また,工場の製品検査としても,使用しているものの点検にも利用されている。表面の欠陥はある程度以上大きくなれば肉眼ですぐ見つかるが,微細なものは発見しにくい。そこで,試験品の表面の油など異物をきれいに取り除いて,浸透液に浸すか,塗るかして,液が欠陥にしみこむのを待つ。この液に染色浸透液を使う場合(染色浸透探傷)と,蛍光浸透液を使う場合(蛍光浸透探傷)とがある。一定時間たったら,表面に余分に残っている浸透液を除く。次いで,現像剤と呼ばれている白色の微粉末を表面に一様に塗る。現像といっても写真のとは原理が違い,この粉末が欠陥のなかにしみこんでいた浸透液を吸い出す作用をする。染色浸透液のときは,吸い出された液が赤い模様をつくり,欠陥の存在を示す。蛍光浸透液のときは,現像の終わった試験体を暗室のなかで紫外線の下で観察すると,吸い出された液が黄緑色の蛍光を発する模様をつくる。このような方法で肉眼では直接に見つからない表面欠陥が発見される。染色法は場所によらず利用できるのに対し,蛍光法は観察のための設備が必要であるが,感度ははるかにすぐれている。
執筆者:大久保 忠恒
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報