消滅可能性都市(読み)ショウメツカノウセイトシ

デジタル大辞泉 「消滅可能性都市」の意味・読み・例文・類語

しょうめつかのうせい‐とし〔セウメツカノウセイ‐〕【消滅可能性都市】

少子化人口流出歯止めがかからず、存続できなくなるおそれがある自治体。平成26年(2014)に日本創成会議指摘。平成22年(2010)から令和22年(2040)までの間に20~39歳の女性の人口が5割以下に減少すると推計される自治体で、全国市区町村の約半数が該当する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「消滅可能性都市」の意味・わかりやすい解説

消滅可能性都市
しょうめつかのうせいとし

全国の市区町村別に2010年(平成22)から30年間の人口の移動を推計した場合、行政や社会保障の維持、雇用の確保などが困難になるとみられる自治体のこと。民間の有識者でつくる政策発信組織である日本創成会議の人口減少問題検討分科会が「人口再生産力に着目した市区町村別将来推計人口」をもとに試算し、2014年5月に少子化対策の提言とあわせて公表した。

 出産可能年齢の95%にあたる若年女性人口(20~39歳)を、人口の再生産力を中心的に担う層ととらえ、その若年女性人口が減少し続ける場合、人口の再生産力も低下し続け、総人口も減少する、というのが基本的な考え方である。これに基づき、人口移動が2010年から2015年の水準(推計)で続いた場合、地方から大都市圏への人口の流出が出生数を上回るため、多くの地方都市で人口減少が続き、2040年までに若年女性人口が5割以下に減少すると予測。試算では、政令指定都市行政区を含む全国1800市区町村のうち、49.8%にあたる896自治体が消滅する可能性が高いという結果が出た。この数は、これまで国が試算していた危機的な自治体数373の倍以上の数にのぼっている。都道府県別では、青森岩手秋田山形島根の5県で若年女性人口の減少が8割以上にのぼっており、若年女性の人口が5割以上減少するとみられる自治体は24道県となった。

 なお、この試算は国立社会保障・人口問題研究所が2013年3月に集計した人口推計データを基に行われたもので、福島県については、2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故の影響のため、人口の動向、推移の見通しが困難なことから市町村別人口推計は行われていない。

[編集部]

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知恵蔵 「消滅可能性都市」の解説

消滅可能性都市

少子化の進行に伴う人口減少によって、存続が困難になると予測されている自治体。「日本創成会議」人口減少問題検討分科会が、2040年までに全国約1800市町村のうち約半数(896市町村)が消滅する恐れがある、と発表した(14年5月)。10年の国勢調査を基にした試算で、40年時点に20~39歳の女性人口が半減する自治体を「消滅可能性都市」と見なしている。同時点までに人口1万人を切る523の自治体は、とりわけ消滅の危険性が高いという。「日本創成会議」座長・増田寛也が試算・発表したことから、通称「増田レポート」とも呼ばれる。
都道府県別では、青森・岩手・秋田・山形・島根の5県は8割以上の市町村が該当し、特に秋田県は大潟村を除く全自治体に消滅の危機があるという。人口が多い首都圏も例外ではなく、東京23区では豊島区、神奈川県では三浦市(他8自治体)、大阪市では中央区(他4区)なども「消滅可能性都市」にリストアップされている。なかでも、東京都は女性の出生率が低く、また地方都市の人口減少に伴い若年層の流入も減ることから、急激な高齢化による衰退が指摘されている。
このように「増田レポート」は、具体的な市町村名も発表したため、該当する自治体には大きな衝撃となった。一方、出産適齢期の女性人口の推移による分析で短絡すぎること、11年の東日本大震災をきっかけに進んでいる「ふるさと回帰」「田園回帰」の流れが加味されていないことなどから、推計・解釈自体に問題があるという批判も多い。なお、「消滅可能性都市」は、14年のユーキャン新語・流行語大賞の候補にもなった。

(大迫秀樹 フリー編集者/2014年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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