日本大百科全書(ニッポニカ) 「消費者の権利」の意味・わかりやすい解説
消費者の権利
しょうひしゃのけんり
消費者に確保されるべき基本的な権利や責任を表す概念。1962年にアメリカ大統領ケネディが、消費者利益の保護に関する特別教書において、四つの権利「安全である権利」「知らされる権利」「自由選択の権利」「意見が反映される権利」を提示した。その後、大統領フォードによって、「消費者教育を受ける権利」が五つ目の権利として加えられた。これら五つの消費者の権利は、行政、事業者、消費者のそれぞれが、消費者の利益を守るためにとるべき行動の世界的な指針となった。
1982年には、国際的な消費者団体である国際消費者機構(CI)が、ケネディの示した消費者の権利とは別に、消費者が負うべき責任についても明示して、以下のような八つの権利と、五つの責任を提唱した。八つの消費者の権利は、(1)生活のニーズが保障される権利、(2)安全への権利、(3)情報を与えられる権利、(4)選択をする権利、(5)意見が反映される権利、(6)補償を受ける権利、(7)消費者教育を受ける権利、(8)健全な環境を享受する権利。五つの消費者の責任は、(1)批判的意識をもつ責任、(2)改善を主張し行動する責任、(3)社会的弱者に配慮する責任、(4)環境に配慮する責任、(5)連帯する責任、である。
日本では、1968年(昭和43)に消費者保護基本法が制定されたことにより、1970年には国民生活センターが設立された。また、1995年(平成7)に製造物責任法(PL法)、2001年(平成13)に消費者契約法が施行された。その後、2004年に消費者保護基本法が消費者基本法に改正され、このときにようやくケネディの提唱した四つの権利に加え、消費者に必要な消費者教育が提供される権利や、被害の生じた消費者が適切に迅速な救済を受けられる権利などが明記された。また、2009年の消費者庁設置以降、消費者の権利や責任を考えるにあたっては、消費者がよりよい企業や商品を選ぶことによって社会的責任を果たす経済的投票行動という側面が重視され、消費者保護の観点から消費者の権利行使の観点へと、その重点がシフトしている。
[編集部]