液化石油ガス(読み)えきかせきゆがす(英語表記)liquefied petroleum gas

日本大百科全書(ニッポニカ) 「液化石油ガス」の意味・わかりやすい解説

液化石油ガス
えきかせきゆがす
liquefied petroleum gas

石油工業で副生する炭素数3~4個の炭化水素ガスを常温加圧下で液化したもの。LPG、LPガス、または俗称としてプロパンガスともよばれる。主成分はプロパン(炭素数3個)、またはブタン(炭素数4個)であり、供給源によってはアルケン(脂肪族不飽和炭化水素)であるプロペン(プロピレン)、ブテンを含有する。液化石油ガスは常温・常圧では気体であるが、常温で10気圧程度に圧縮すると容易に液体となり、体積も200~250分の1になる。したがって、貯蔵運搬が簡単であり、しかも炭化水素として純度が高いことから、クリーンな燃料である点でほかの燃料に比べ際だった特徴がある。

[難波征太郎]

供給と需要

液化石油ガスの供給は、輸入によるものが約80%、石油精製工程中で得られるものが約20%で、そのほか石油化学および天然ガス採取の副産物としてのものが若干ある。輸入液化石油ガスは、油田における随伴ガスまたは天然ガスの処理により分離採取されたものである。このようにして供給される液化石油ガスは、一般にプロパンまたはブタンに分けられており、用途に応じてそのまま、またはこれらを混合して販売される。

 家庭・業務用液化石油ガスは、全需要の40%以上を占めている。市販ガス燃料として、熱量、需要世帯数ともに都市ガスをしのぎ、ガス燃料の50%以上を占めている。家庭・業務用液化石油ガスは、通常80%以上のプロパン、プロピレンを含み、容器内の圧力は40℃において1平方センチメートル当り15.6キログラム以下と定められている。使用する際は圧力調節器により水柱230~330ミリメートルに減圧する。毒性が弱く爆発限界も狭いが、空気より重く低い所にたまりやすいので、通風に十分注意する必要がある。

 自動車燃料用の液化石油ガスは全需要の約8%を占め、ほとんどがタクシー用である。家庭用と異なり主成分はブタンであるが、法規制により燃料ポンプを所持できないため、気温に応じて10~30%のプロパンを混入させ、圧力を調節している。

 工業用液化石油ガスは全需要の約30%を占める。運搬が容易であり、クリーンで燃焼の制御性が高いという利点がある。したがって、液化石油ガスの組成はあまり問題にならないが、熱量のより大きいブタンを主成分とするものが多く用いられているのが現状である。化学原料用の液化石油ガスは全需要の10%以下であり、アンモニア、メタノール(メチルアルコール)およびエチレン製造に用いられる。このほか、都市ガスの増熱用にブタンの添加が行われている。また、ガスライターの燃料はブタンを主成分としたものである。

[難波征太郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「液化石油ガス」の意味・わかりやすい解説

液化石油ガス
えきかせきゆガス
liquefied petroleum gas; LPG

石油系炭化水素のうち炭素原子の数が3または4のもの,つまりプロパン,ブタン,プロピレン,ブチレンまたはこれらを主成分とする混合物を液化したもの。これらは常温常圧下では気体であるが,加圧 (6~7気圧) あるいは冷却 (-42.2~-0.6℃) すると容易に液化し,無色無臭,比重 0.5~0.58の液体となる。気体比重は空気の 1.5~2.0倍で,漏洩すると低所に滞留する。プロパンの場合,液体積は気体のときの 250分の1,発熱量は2万 4000 kcal/m3 で都市ガスの約5倍。石油精製の際に発生するガスや湿性天然ガスから製造されるが,石油化学の工程中からも発生する。取扱いが便利なうえ,減圧すれば気化してガス体燃料として利用できるので,都市ガスの普及していない地域の家庭用燃料や自動車燃料に広く用いられ,また都市ガスの熱量増加用に他のガスと混合されることも多い。発熱量が大きく硫黄分も少いので金属溶断,陶磁器焼成用など工業用の用途も広い。市販の液化石油ガスはプロパンガスと呼ばれているが,プロパンの単一成分ではなく,プロパン,ブタン,プロピレンなどの混合物である。家庭用,業務用の燃料にはプロパン 70~80%,ブタン 20~30%のものが,自動車燃料にはブタン 70~80%以上で不飽和炭化水素の少いものが用いられる。ブタンはプロパンより沸点が高く,使いにくいが,価格が安いため,自動車燃料,工業用燃料,都市ガスなどに用いられ,大口需要の場合はブタン,ブチレンの含有比率の高いガスが用いられる。

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