液化石油ガス(読み)エキカセキユガス(その他表記)liquefied petroleum gas

デジタル大辞泉 「液化石油ガス」の意味・読み・例文・類語

えきか‐せきゆガス〔エキクワ‐〕【液化石油ガス】

石油精製の副産物として出てくるプロパンブタンなどの炭素数が3または4の炭化水素ガスを、常温で加圧し液化したもの。工業用・家庭用燃料として広く使われる。プロパンガスLPガスLPG(liquefied petroleum gas)。

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精選版 日本国語大辞典 「液化石油ガス」の意味・読み・例文・類語

えきか‐せきゆガスエキクヮ‥【液化石油ガス】

  1. 〘 名詞 〙 ( ガスは[オランダ語・英語] gas ) 石油精製の副産物として出てくる炭素数3および4の炭化水素ガスを圧縮して液化したもの。プロパン、ブタン、プロピレンおよびブチレン。燃料や合成樹脂原料として用いる。LPガス。LPG。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「液化石油ガス」の意味・わかりやすい解説

液化石油ガス
えきかせきゆがす
liquefied petroleum gas

石油工業で副生する炭素数3~4個の炭化水素ガスを常温加圧下で液化したもの。LPG、LPガス、または俗称としてプロパンガスともよばれる。主成分はプロパン(炭素数3個)、またはブタン(炭素数4個)であり、供給源によってはアルケン(脂肪族不飽和炭化水素)であるプロペン(プロピレン)、ブテンを含有する。液化石油ガスは常温・常圧では気体であるが、常温で10気圧程度に圧縮すると容易に液体となり、体積も200~250分の1になる。したがって、貯蔵、運搬が簡単であり、しかも炭化水素として純度が高いことから、クリーンな燃料である点でほかの燃料に比べ際だった特徴がある。

[難波征太郎]

供給と需要

液化石油ガスの供給は、輸入によるものが約80%、石油精製工程中で得られるものが約20%で、そのほか石油化学および天然ガス採取の副産物としてのものが若干ある。輸入液化石油ガスは、油田における随伴ガスまたは天然ガスの処理により分離採取されたものである。このようにして供給される液化石油ガスは、一般にプロパンまたはブタンに分けられており、用途に応じてそのまま、またはこれらを混合して販売される。

 家庭・業務用液化石油ガスは、全需要の40%以上を占めている。市販ガス燃料として、熱量、需要世帯数ともに都市ガスをしのぎ、ガス燃料の50%以上を占めている。家庭・業務用液化石油ガスは、通常80%以上のプロパン、プロピレンを含み、容器内の圧力は40℃において1平方センチメートル当り15.6キログラム以下と定められている。使用する際は圧力調節器により水柱230~330ミリメートルに減圧する。毒性が弱く爆発限界も狭いが、空気より重く低い所にたまりやすいので、通風に十分注意する必要がある。

 自動車燃料用の液化石油ガスは全需要の約8%を占め、ほとんどがタクシー用である。家庭用と異なり主成分はブタンであるが、法規制により燃料ポンプを所持できないため、気温に応じて10~30%のプロパンを混入させ、圧力を調節している。

 工業用液化石油ガスは全需要の約30%を占める。運搬が容易であり、クリーンで燃焼の制御性が高いという利点がある。したがって、液化石油ガスの組成はあまり問題にならないが、熱量のより大きいブタンを主成分とするものが多く用いられているのが現状である。化学原料用の液化石油ガスは全需要の10%以下であり、アンモニア、メタノールメチルアルコール)およびエチレン製造に用いられる。このほか、都市ガスの増熱用にブタンの添加が行われている。また、ガスライターの燃料はブタンを主成分としたものである。

[難波征太郎]

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改訂新版 世界大百科事典 「液化石油ガス」の意味・わかりやすい解説

液化石油ガス (えきかせきゆガス)
liquefied petroleum gas

略称LPG。俗にプロパンガスともいう。炭素数3あるいは4の脂肪族炭化水素であるプロパンC3H8,プロピレンC3H6,ブタンC4H10,ブチレンC4H8などは常温・常圧下では気体であるが,冷却または加圧することにより比較的容易に液化するので,ボンベなどの加圧容器に充てんすれば輸送に便利である。この液化された炭化水素混合物を液化石油ガスといい,家庭用,工業用,自動車用などの燃料として,また化学原料としても広く用いられている。無色で微弱なガス臭があり,毒性は弱いが,多量に吸入すれば軽微な麻酔性がある。爆発限界は約2~10%(容量)と狭いが,比重が空気よりも大きいので,漏れ出した場合は低いところに停滞しがちで気づきにくい。漏洩(ろうえい)検知の目的で着臭剤が加えられているが,通風に十分な注意が必要である。総発熱量約2万4000kcal/m3(プロパン)~3万1000kcal/m3(ブタン)で都市ガスの数倍も大きく,また硫黄分をほとんど含まない。

液化石油ガスは湿性天然ガスから,また原油のスタビライズ(蒸気圧調整)工程から回収される。また石油精製工場の常圧蒸留装置や接触分解・水素化分解装置などから発生する製油所ガス,さらに石油化学工場のナフサ熱分解装置の分解ガスなどから回収される。回収技術としては,圧縮冷却,溶剤吸収,活性炭吸着などの方法があり,また低温分留,アルカリ洗浄などの方法によって分離,精製が行われる。

液化石油ガスの用途は次のとおりである。(1)家庭・業務用。プロパンを主成分とするLPGが用いられ,厨房(ちゆうぼう),暖房用などにあてられる。(2)工業用。ブタンを主成分とするLPGが用いられ,金属工業,窯業,食品,印刷,塗装その他の工業で用いられる。燃焼排気がきれいである点が喜ばれている。(3)自動車用。ブタンが営業用乗用車に大量に用いられている。オクタン価が高く,排気もきれいである。(4)都市ガス用。増熱用に利用される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「液化石油ガス」の意味・わかりやすい解説

液化石油ガス
えきかせきゆガス
liquefied petroleum gas; LPG

石油系炭化水素のうち炭素原子の数が3または4のもの,つまりプロパン,ブタン,プロピレン,ブチレンまたはこれらを主成分とする混合物を液化したもの。これらは常温常圧下では気体であるが,加圧 (6~7気圧) あるいは冷却 (-42.2~-0.6℃) すると容易に液化し,無色無臭,比重 0.5~0.58の液体となる。気体比重は空気の 1.5~2.0倍で,漏洩すると低所に滞留する。プロパンの場合,液体積は気体のときの 250分の1,発熱量は2万 4000 kcal/m3 で都市ガスの約5倍。石油精製の際に発生するガスや湿性天然ガスから製造されるが,石油化学の工程中からも発生する。取扱いが便利なうえ,減圧すれば気化してガス体燃料として利用できるので,都市ガスの普及していない地域の家庭用燃料や自動車燃料に広く用いられ,また都市ガスの熱量増加用に他のガスと混合されることも多い。発熱量が大きく硫黄分も少いので金属溶断,陶磁器焼成用など工業用の用途も広い。市販の液化石油ガスはプロパンガスと呼ばれているが,プロパンの単一成分ではなく,プロパン,ブタン,プロピレンなどの混合物である。家庭用,業務用の燃料にはプロパン 70~80%,ブタン 20~30%のものが,自動車燃料にはブタン 70~80%以上で不飽和炭化水素の少いものが用いられる。ブタンはプロパンより沸点が高く,使いにくいが,価格が安いため,自動車燃料,工業用燃料,都市ガスなどに用いられ,大口需要の場合はブタン,ブチレンの含有比率の高いガスが用いられる。

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百科事典マイペディア 「液化石油ガス」の意味・わかりやすい解説

液化石油ガス【えきかせきゆガス】

LPG(liquefied petroleum gasの略)ともいう。身近なものとしてプロパンガスがある。石油精製または石油化学工業で副生する炭化水素のうち,おもにプロパンC3H8またはブタンC4H1(/0)を分けとり,ボンベ中に加圧液化したもの。家庭用,商工業用,タクシーなど一部自動車用の燃料として使用。発熱量約2万4000kcal/m3(プロパン)〜3万1000kcal/m3(ブタン)。2005年,石川県七尾市に国内初のLPガス備蓄基地が完成した。
→関連項目都市ガスプロパン

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化学辞典 第2版 「液化石油ガス」の解説

液化石油ガス
エキカセキユガス
liquefied petroleum gas

略称LPG.石油工業で副生する炭素数3~4のガス状炭化水素を圧縮液化して,耐圧容器に充填したもの.プロパンを主成分としたものが多く,俗にプロパンガスともよばれる.容易に気化して都市ガスと同様に使用でき,家庭用,工業用燃料として広く用いられる.ガスライター用のガスはブタンが主成分で,これも液化石油ガスの一種である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

知恵蔵 「液化石油ガス」の解説

液化石油ガス

炭素数3及び4の炭化水素ガス(プロパン、プロピレン、ブタン、ブチレン及びその混合物)がLPG。石油精製時に発生するガス、天然湿性ガス、石油化学工業での原料油の熱分解生成物などが原料。加圧すると液化して輸送に便利なため、都市ガスのない地域の家庭・商業用燃料、自動車用燃料、また一部は工業用原料に利用される。LNGは、メタンガスを-162℃で液化すると体積が600分の1になって輸送が容易。日本はLNGタンカーで海外から輸入。

(槌屋治紀 システム技術研究所所長 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

世界大百科事典(旧版)内の液化石油ガスの言及

【ガス事業】より

…他方,都市ガスの原料は石油危機後,急速に多様化している。すなわち昭和40年代の後半以降,従来の石炭系ガスから石油系ガスへのシフトが進んだが,石油危機後は石油系ガスも急減し,これに代わってLNG(液化天然ガス)とLPG(液化石油ガス)が急増している。原料構成は,石油危機当時の1973年度には石炭系23%,石油系42%,LNG24%,LPG10%であったが,これが80年度には石炭系10%,石油系17%,LNG54%,LPG19%へと大きく変化した。…

※「液化石油ガス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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