混銑炉(読み)こんせんろ(英語表記)mixer

翻訳|mixer

改訂新版 世界大百科事典 「混銑炉」の意味・わかりやすい解説

混銑炉 (こんせんろ)
mixer

銑鋼一貫工程においては,高炉からの出銑量と製鋼工場の溶銑使用量が時間的に一致しない。そこで両者の間に,溶銑の貯蔵を行い需給のバランスをはかるとともに,出銑ごとに相違する溶銑の成分と温度を均一にするための炉を設置する。これを混銑炉という。円筒形の鉄皮の内側にケイ石煉瓦,シャモット煉瓦などを内張りした炉で,貯銑容量は500~2500tくらいである(1800t炉の鉄皮寸法の一例は直径8m,長さ13m)。保熱燃料としては重油またはコークス炉ガスが使用される。混銑炉は平炉全盛時代に非常に普及し,転炉製鋼に移行するにつれ大型化した。近年の新鋭大型一貫製鉄所における溶銑の輸送,貯蔵のためには,従来の取鍋(とりべ)/(とりなべ)-混銑炉方式に代わって,能率ならびに設備費や作業費の点から比較的経済的である混銑車(トーピードカーtorpedo car)方式がより多く採用されるようになっている。混銑車は保温力の優れた大容量(貯銑容量250~400t)の溶銑輸送容器であり,2台の台車の上に耐火煉瓦で内張りした炉体をのせた構造になっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「混銑炉」の意味・わかりやすい解説

混銑炉
こんせんろ
mixer

高炉(溶鉱炉)から出銑された溶銑の貯蔵、均質化、保温を目的とした炉。容量は500~2500トン、通常円筒形で、天井部分を高アルミナ質、直接溶銑に接する部分をマグネシア質れんがで内張りする。受銑口、出銑口および排滓(はいさい)口を設け、炉体は前後に傾動できる。一般に同一高炉からでも出銑ごとに溶銑成分、温度はかなり変動する。混銑炉は、製鋼過程である転炉作業を合理的に安定して行わせ、鋼の成分、品質を制御するために主原料である溶銑を均一化させ、また転炉設備の補修時などにおける溶銑の貯蔵など高炉と転炉間の溶銑の流れの緩衝の役目をもする。近年、高炉の大型化による出銑量の飛躍的増加に伴い、取鍋(とりべ)と混銑炉の両機能をもつ混銑車トーピード・カーtorpedo carが出現した。名のごとく円錐(えんすい)を横に二つつないだ形である。混銑車における脱硫、脱リンなどの溶銑予備処理も活発に行われている。

[井口泰孝]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「混銑炉」の意味・わかりやすい解説

混銑炉
こんせんろ
(accumulating) mixer

高炉から出る溶銑を製鋼工程に送るまで貯留する炉。通常 300~1500t程度の容量をもち,水平円筒形の鉄板外被に厚く耐火煉瓦で内張りした構造で,上部に溶銑注入口,正面に出銑口があり,必要ならば背面に出滓口をつける。全体は鋼製ローラ上に架構され,揺動傾注できるようになっている。ガスまたは重油バーナで加熱保温する。溶銑を混和して組成を均一化することを目的とするが,揺動により脱硫が促され,少量の鉱滓ができる。

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百科事典マイペディア 「混銑炉」の意味・わかりやすい解説

混銑炉【こんせんろ】

高炉製鋼炉中間にあって溶銑を貯留,混合する炉。銑鋼一貫作業において高炉作業と製鋼作業の時間的なずれを調整し,同時に溶銑成分の均一化を行う。ふつう円筒形で,容量は500〜2500t。

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世界大百科事典(旧版)内の混銑炉の言及

【捏和】より

…粘稠物質は一般に温度の影響を強く受け,とくにその流動性は温度上昇とともに急激によくなるので,操作の容易性と製品品質の点から操作温度が決められる。 捏和装置としてはニーダーkneader(図1),ミキサーmixer,混練機,捏練機などと呼ばれる種々の型式のものがある(図2にシグマ型双腕捏和機を示す)。これらは強力な剪断作用を原料全体にまんべんなく繰り返して与え,原料の停滞付着部が生じないように容器およびかくはん翼などの形状がくふうされ,がんじょうな構造を有し,水蒸気や冷却水を通すジャケットなどの加熱・冷却機構を備えたものも多い。…

【ミキサー】より

…電気工学用語。放送の分野では,ミクサーともいう。放送やレコード録音,拡声などにおいて,いくつかのマイクロホンで収音した音,あるいはすでに録音してあるテープやレコードの音などを,それぞれの相対的なレベル(音の大きさ)や音色,さらに全体のレベルを調整しながら混合し,一つの演出意図にそった音の作品に作り上げる作業をミクシングと呼ぶが,このために使われる電気的な装置をミクサーという。ミクシング増幅器(アンプ),混合増幅器ともいい,またスタジオのコントロール・ルームで使われるような据置形のものは音声調整卓あるいはミクシング・コンソールと呼ばれることが多い。…

【ミキサー】より

…野菜や果物などの食品を細分,攪拌(かくはん),混合,製粉などする調理器。一般に電動機を動力とし,毎分2500~1万3000回転でカップ内部のカッターを回転させる。日本で初めて発売されたのは1948年で,アメリカのハウザー博士の,生ジュースを勧める《若く見え長生きするには》が日本でもベストセラーとなり,52年ころにはミキサー・ブームとなった。現在は年間生産170万台前後で普及率は50%台。攪拌のみを行うハンドミキサーも製菓などの際に用いられている。…

※「混銑炉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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