日本大百科全書(ニッポニカ) 「温度風」の意味・わかりやすい解説
温度風
おんどふう
気層の上面と下面における地衡風のベクトル差をいう。風の高さによる変化を支配する要因は複雑であるが、大気境界層より上の自由大気では地衡風が卓越し、その高さによる変化は温度の水平分布に支配されることから、温度風の名がある。二つの等圧面に挟まれた気層の厚さは、気層の平均気温を表し、高(低)温域で気層が厚(薄)くなる。したがって、気層の上、下面で等圧面の傾きに差が生じ、それに応じて気層の上、下面で地衡風に差が生ずる。この差が温度風である。温度風は高温域を右(北半球)にして気層の平均気温の等温線に平行に吹き、その強さは等温線の間隔に反比例する。温度風の関係を利用すれば、風の高さによる変化から、各層の気温の水平分布や熱的構造を推定することが可能である。逆に、ある高さの気温と風の水平分布から、その高さを挟んでの上下の地衡風を推定することが可能である。
[股野宏志]