出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中国、晩唐の唯美詩人。字(あざな)は飛卿(ひけい)。太原(たいげん)(山西省)の出身。優れた詩才をもちながらも、あえて自ら酒色や賭博(とばく)などに身を持ち崩し、ついに科挙に合格できなかった。その最終官職は国子助教という低いものである。彼が好んで詠(うた)ったテーマは、退廃的な恋愛とみなされがちであるが、はばかるところない官能への埋没こそ、唐王朝末期に生まれ合わせた詩人が、徹底して自己を凝視し、かつ主張する手段として恋愛を把握していたことを意味する。その結果として、『温庭筠詩集』7巻、『別集』1巻は、各人が分有する特殊な個(エゴ)の基底に横たわる人間一般の描写に、はしなくも成功しているのである。詩とともに詞(ツウ)の開拓者としても重要。
[野口一雄]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…中唐以後は文人たちも長短句の詞を作るようになり,白居易の〈憶江南〉,張志和の〈漁父〉などの例がある。ついで晩唐の詩人温庭筠(おんていいん)は,この歌謡の形式をもって創造的な文学的世界を開拓した。その詞は華麗な筆致で孤独な佳人を描きつつ,自らの不遇の憂悶を託する。…
…それは妓女がうたう歌謡曲であった。その歌詞を洗練された詩語を用いて作り,教養ある人々の鑑賞にたえる文学としたのは晩唐の詩人温庭筠(おんていいん)であるが,その後これを作る文人はしだいに多くなって,宋代にはきわめてさかんであり,柳永のごとき〈詩余〉を専門とする作家が出た。彼らの作の内容はおおむね不幸な恋の訴えで,そこに描かれる風景もその悲哀に彩られていた。…
※「温庭筠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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