日本大百科全書(ニッポニカ) 「湖底堆積物」の意味・わかりやすい解説
湖底堆積物
こていたいせきぶつ
湖底堆積物は流入河川や湖岸侵食によって湖外から持ち込まれた流域起源の堆積物と、湖内で生産された堆積物とに大別される。前者は主として土砂などの無機物質からなり、流入した粗粒の掃流物質は沿岸帯に堆積する。また、水中に懸濁した浮流物質は粗粒部分から順次沈降堆積しつつ、湖流により沖合いに運ばれる。したがって、湖心部には沈泥や粘土の細粒物質が堆積する。しかし、洪水時に河川から流入する濁水や、湖底斜面の地すべりなどで生じた濁水は、それ自体高密度の水塊を形成し、混濁流または乱泥流とよばれる底層流となって湖底斜面を流下し、粗粒物質を沖合いまで運ぶことがある。
一方、湖内起源のプランクトン遺骸(いがい)や沿岸植物などの有機物質からなる堆積物は主として沖合い帯に分布し、骸泥(がいでい)(またはスウェーデン語でユッチャgyttja)とよばれる。これに対して、湖流域の泥炭などの有機物質が湖外から流入して堆積したものを腐植泥(またはスウェーデン語でディユdy)とよび区別している。また、堆積の際にほかから運搬されてきた他生鉱物の一つとして、軽石や火山灰などの火山噴出物が、直接湖面に降下堆積する場合や、湖流域に堆積したのち河川によって運ばれ湖底に再堆積することがあり、これが湖底堆積物の柱状(コア・サンプル)の年代を決める手掛りになることもある。
[中尾欣四郎]