改訂新版 世界大百科事典 「湯屋番」の意味・わかりやすい解説
湯屋番 (ゆやばん)
落語。勘当された若旦那が,棟梁(とうりよう)の家に居候するうちに銭湯へ奉公することになり,主人の昼食の間に番台に座っていろいろと空想にふける。入浴に来る客のなかで自分を見初める女がいることにきめて,その女の家に寄ったときに大夕立で落雷し,気絶した女を介抱する場面を空想して夢中になっている。そのうちに,ひとりの客が下駄がないと言って怒ると,隅にある上等の下駄をはいて帰れとすすめる。〈おめえの下駄か〉〈あたしの下駄じゃありません。中へはいってるお客さんのです〉〈それじゃあ,おれがはいて帰ったら怒るだろう〉〈怒ったっていいですよ。怒ったら順にはかせて,一番おしまいのひとは,はだしで帰します〉。古くからある噺で,むかしは銭湯の名を,柳派では奴湯(やつこゆ),または梅の湯,三遊派では桜湯としていた。
執筆者:興津 要
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報