溶融紡糸(読み)ようゆうぼうし(英語表記)melt spinning

改訂新版 世界大百科事典 「溶融紡糸」の意味・わかりやすい解説

溶融紡糸 (ようゆうぼうし)
melt spinning

ナイロンポリエステルなどのように高温加熱すると溶融し,低温に戻すと固体に戻る合成高分子に対して,このような熱可塑性を利用して行う紡糸方法。これには原料となる高分子を加熱して溶融温度以上にし流動化させて,所望の太さの紡糸口金から押し出し冷却固化する。ナイロンの溶融紡糸の例を図に示す。ナイロンは加熱されて粘稠液体となりプールにたまる。紡糸ジェット(口金)から押し出されたフィラメントは空気で冷やされて固化する。たくさんの細いフィラメントは集められてボビンに巻かれる。繊維として使える高い強度をもたせるために,冷延伸によってフィラメントは約4倍に延ばされる。このとき繊維内部で高分子鎖の配列が起こり,結晶化度が増加することによって繊維の強度が上がる。紡糸速度は毎分1200mが普通だが,最新式の機械では毎分3000~4000mで紡糸できる。溶融紡糸法は他の紡糸法に比べて紡糸速度が大きく,したがって製造コストも安い。
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化学辞典 第2版 「溶融紡糸」の解説

溶融紡糸
ヨウユウボウシ
melt spinning

繊維形成能をもつ高分子で融解できるものを用い,溶融体にして紡糸口金より不活性冷却媒体(空気,窒素,水など)中に押し出し,冷却固化させて繊維とする紡糸方法.溶融体が空気に触れて分解するときは,N2,CO2などの不活性気体中で融解させる.紡糸後,延伸して,結晶化,配向化をする.延伸を常温付近で行うとき,冷延伸という.最大の利点は紡糸速度を速くでき,1 km min-1 以上の場合を高速溶融紡糸とよび,10 km min-1 まで可能である.ナイロンポリエステルポリプロピレンなどの紡糸に用いられる.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「溶融紡糸」の意味・わかりやすい解説

溶融紡糸
ようゆうぼうし
melt spinning

化学繊維の主要な紡糸法の一形式。原料の高分子化合物を加熱融解し,紡糸口金 (ノズル) から一定速度で空気や水の中に押出し,繊維状に冷却固化させて繊維を製造する方法。溶媒,凝固液を使用しないため高速度の紡糸が可能であるが,溶融液は酸化,熱分解を受けやすく,流動性が温度によって鋭敏に左右されるので,融解状態の時間短縮,正確な温度制御などの考慮が必要である。原料に応じて次のような紡糸法がある。 (1) 溶融格子紡糸法 ポリアミド,ポリエステルなどに使用。 (2) スクリュー押出し紡糸法 ナイロン,ポリエステル,塩化ビニリデン共重合物,ポリオレフィンなどに広く用いられている。 (3) 連続重合紡糸法 6-ナイロン繊維の製造に使用。溶融紡糸法は,ポリアミド,ポリエステル,塩化ビニリデン,ポリオレフィン,ガラス,岩石などの各繊維の製造に利用される,きわめて能率的な紡糸法。

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世界大百科事典(旧版)内の溶融紡糸の言及

【紡糸】より

…綿,羊毛,麻などの短い繊維を平行に並べて撚り(より)をかけて糸を作ることは紡績という。紡糸法には,溶融紡糸melt spinning,湿式紡糸wet spinningおよび乾式紡糸dry spinningがある。ここでは湿式紡糸と乾式紡糸について述べるが,合成高分子に多用される溶融紡糸については,その項目を参照されたい。…

【紡糸】より

…綿,羊毛,麻などの短い繊維を平行に並べて撚り(より)をかけて糸を作ることは紡績という。紡糸法には,溶融紡糸melt spinning,湿式紡糸wet spinningおよび乾式紡糸dry spinningがある。ここでは湿式紡糸と乾式紡糸について述べるが,合成高分子に多用される溶融紡糸については,その項目を参照されたい。…

※「溶融紡糸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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