塩化ビニリデン(読み)えんかびにりでん(英語表記)vinylidene chloride

日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化ビニリデン」の意味・わかりやすい解説

塩化ビニリデン
えんかびにりでん
vinylidene chloride

エチレンの塩素二置換体の一つ。正しくは1,1-ジクロロエテンという。クロロホルムに似たにおいのする揮発性無色液体。

 工業的には、クロロエテン(クロロエチレン塩化ビニル)への塩素付加または1,2-ジクロロエタンの塩素置換により得られる1,1,2-トリクロロエタンを、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムにより脱塩化水素することにより製造する。きわめて不安定な化合物で、酸素に触れ過酸化物をつくり爆発することがあるので水中や暗所で貯蔵する。光、熱、触媒により重合しやすい。塩化ビニル、酢酸ビニルアクリロニトリルなどとの共重合体がよく用いられ、合成繊維、商標名サランで知られる、耐薬品性が大きく吸湿性の小さいラップ用食品保存フィルムなどの原料となる。自動車の内装、漁網などにも使われる。蒸気は麻酔作用があり有害である。

[谷利陸平]



塩化ビニリデン(データノート)
えんかびにりでんでーたのーと

塩化ビニリデン
  CH2=CCl2
 分子式 C2H2Cl2
 分子量 96.9
 融点  -122.1℃
 沸点  31.7℃
 比重  1.2129(測定温度20℃)
 屈折率 (n)1.4249

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩化ビニリデン」の意味・わかりやすい解説

塩化ビニリデン
えんかビニリデン
vinylidene chloride

エチレンの同一炭素原子に結合している2個の水素原子が塩素原子により置換された化合物 CH2=CCl2 のこと。一般に CH2=C< をビニリデン基という。沸点 31.7℃,凝固点-122.5℃。塩化ビニルを塩素化し,CH2Cl-CHCl2 とし,その脱塩化水素反応で得られる。酸素に触れると過酸化物をつくり,熱,光,遊離基などの触媒作用によって重合する。また爆発性があるので,水中に保存する。塩化ビニルとの共重合体は繊維状にして漁網などに,フィルム状にして包装用に,またラテックスはコンクリート養生剤に利用される。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android