漏斗胸(読み)ろうときょう(英語表記)funnel chest

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

漏斗胸
ろうときょう
funnel chest

胸骨下部および肋軟骨漏斗状に陥没したもの。胸郭の前後径が短縮し,著しい場合には胸骨脊椎に密接するほどになる。他の奇形を合併することもある。多くはほとんど障害がないが,変形が強度の場合には心臓や肺の圧迫症状がみられる。呼吸障害,不整脈心不全などの症状が強い場合には矯正手術が必要である。

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百科事典マイペディアの解説

漏斗胸【ろうときょう】

胸骨が内側に曲がっているため,胸がへこんでいる変形。原因は横隔膜の先天的な形成異常によるとすると,肋骨や肋軟骨の形成不全によるとする説があるが,不明。多くの場合,形態異常以外の症状はなく,また,筋肉や皮下脂肪層が厚くなるにしたがって目立たなくなることが多い。変形によって呼吸困難が起こったり,本人の強い希望がある場合は,手術を行う。

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家庭医学館の解説

ろうときょう【漏斗胸 Funnel Breast】

[どんな病気か]
 胸骨(きょうこつ)(胸の中央にある平らな骨)の中央部が、縦にへこんでいる状態を、漏斗胸といい、男の子に多くみられます。
 肋骨(ろっこつ)と胸骨をつないでいる肋軟骨(ろくなんこつ)という部分が異常に長すぎて、胸骨が押されて、内側にへこんでしまうためにおこります。
[症状]
 軽いものは、少し胸がくぼんでいるだけで、日常生活に支障はありません。
 ひどいときは、へこんだ胸骨が心臓や肺を圧迫し、心臓が横に押しだされたり、肺活量が減ったりすることがあります。
[治療]
 軽度の場合は、治療の必要はありませんが、子どもが外観上、くぼみを気にすることもありますので、心理的なサポートが必要なことがあります。
 中等度の変形は、まず胸郭(きょうかく)全体の発達をうながすような運動をすることを勧めます。
 程度がひどくて、心臓や肺が圧迫されて障害があるときは、両側の肋骨を胸骨から切り離し、くぼんだ胸骨を裏返しにしてかぶせたり、胸骨を持ち上げたりする手術を行ないます。

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世界大百科事典 第2版の解説

ろうときょう【漏斗胸 funnel chest】

胸部の中央,胸骨部が陥没する胸郭の変形で,原因や遺伝性,その発生病理などについてはよくわかっていない。一般に変形は軽度のものが多いが,変形が著しく肺活量の減少や心機能に悪影響のある場合には,手術的に矯正することも行われる。【吉川 靖三】

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大辞林 第三版の解説

ろうときょう【漏斗胸】

前胸部の中央、胸骨の部分が大きくへこんで、漏斗のような形をしている胸。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

漏斗胸
ろうときょう

胸郭の変形の一種で、前胸部の中央部が漏斗状にへこんで変形している状態。それに伴って肋骨(ろっこつ)や肋軟骨も脊髄(せきずい)に向けて後方に落ち込み、円背(えんばい)(猫背)や側彎(そくわん)もしばしばみられる。先天性のものが多く、男児に多くみられ、家族性の発生例も報告されている。まれに成長につれて改善する場合もあるが、多くは変形が目だつようになり、おもに右にかたよるなど左右非対称の胸壁の変形をきたす。
 小児期では無症状に経過するか症状が目だたず気づかれにくいことが多いが、青年期から成人期になるにつれて陥凹(かんおう)した胸骨による心肺の機械的圧迫により、さまざまな症状が出現する。中等度以上の陥凹では、肺活量の低下、呼吸困難、胸痛、易疲労感、喘息(ぜんそく)などを生ずる。陥凹が顕著になると、拘束性換気障害、動悸(どうき)、不整脈などを伴うこともある。また、胸郭の変形からくる劣等感などの心理的障害も伴うようになる。
 なお、軽度の漏斗胸は治療の必要はないとされ、簡易な体操によって軽快することもある。しかし、中等度以上の漏斗胸は手術が必要となることが多い。手術は、従来は胸部を切開して骨を挙上する方法がとられていたが、1987年にアメリカの小児外科医ナスDonald Nussによって考案された金属製のバーを使って胸骨を挙上するナス法(胸腔(きょうくう)鏡下胸骨挙上術)が開発された。保険適応ともなっているため、術後の回復も早い低侵襲な術式として広く用いられている。ナス法では胸部の側方2か所を切開し、胸腔鏡によって内部を観察しながら、ステンレスやチタンなど金属製の彎曲させたバーを胸腔に挿入してへこんだ胸骨を持ち上げて矯正する。バーは2、3年後に抜去する。胸郭の変形からくる心理的障害への対処も必要で、そのため形を修復する形成手術もあわせて検討される。[編集部]

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精選版 日本国語大辞典の解説

ろうと‐きょう【漏斗胸】

〘名〙 胸骨の下部がひどく後方に曲がったために、前胸部の下部がくぼんでいる胸。

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内科学 第10版の解説

漏斗胸(胸部の異常)

(1)漏斗胸 (pectus excavatum)
定義・概念
 漏斗胸は胸骨とそれに付着する肋軟骨および肋骨が陥凹する疾患で,肋軟骨の異常がおもな原因と考えられているが,はっきりとした証明はされていない.家族内発生やMarfan症候群での合併が多いことも知られており,遺伝的素因の関与も考えられている.また扁桃肥大や,アデノイドなどの上気道狭窄により吸気時の過剰な胸郭陰圧負荷による胸郭の陥凹も原因の1つとして考えられている. 漏斗胸の発生率は0.5%程度と考えられ,男女比は3~4:1で男性に多い.胸郭の陥凹の程度はさまざまであり,通常は前胸部中央が陥凹しているが,陥凹が右側に偏倚し非対称性になるものもみられ,さらに頻度は低いが左側に偏倚するものもある.陥凹は出生時から1歳までに気づかれることが多く,成長とともに増強する.10歳をこえると陥凹は右側に偏倚していき,中学生以上では約半数が非対称性となる.女性では乳房の発育にも影響し,美容上の問題となる.
病態・臨床症状
 呼吸機能検査では,胸郭の変形に応じた閉塞性呼吸機能障害を認めるが,胸部の自覚症状を伴うことは少ない.学童期までは感冒に気管支炎を併発しやすく,狭窄した気管支により喘息様の症状を呈することがある. 胸郭の変形により心臓の位置も左に偏倚し,前後に圧排変形するため(図7-17-1),心電図では不完全右脚ブロックやV1でP波の陰転化などを認める.弁形成の異常も伴いやすく,弁膜症,特に僧房弁逸脱症の合併が多いことが知られている.
治療
 乳児期では偽性漏斗胸様陥凹との区別がつきにくいため通常は3歳以上で,また肋軟骨が軟らかく可動性に富むほうが手術が容易なため10歳程度までが至適年齢となる.心肺機能の改善が目的ではなく,美容的改善が目的となる. 手術は従来,胸骨拳上法と胸骨翻転術が行われてきた.胸骨拳上法は変形した肋軟骨を切除し,胸骨を喫状切除後再縫合し胸骨を拳上させる方法で1949年にRavitchらにより報告された.これを基本法とし,いくつかの変法による改良のもと広く標準的な術式として行われている.胸骨や肋骨が硬く,可動性の低下した成人例では胸骨翻転術が行われる.陥凹した胸骨と肋軟骨を一塊として切除し,浅い切開を入れ扁平に形成したのちに,翻転し再縫合する.
 1998年Nussらにより新しい低侵襲手術が報告された.胸腔鏡補助下に胸骨裏面に金属製のバーを挿入し陥凹した胸骨を拳上する方法で,胸骨や肋軟骨の切除が不要なため,創部は側胸部の小さな傷のみで,手術時間も短く,出血量も少ない.そのため,多くの施設が取り入れ,わが国でもこの術式での手術件数が増えている.合併症としてはバー挿入の際の心臓損傷,バーによる感染,バーのずれなどがある.挿入したバーは約2年後に抜去する.[須谷顕尚・礒部 威]

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