胸郭の前壁の正中部にある縦に長い長方形の板状骨をいい、上方が前方に、下方が後方にやや傾いている。胸骨は上方から3部分に分けられる。上部骨は胸骨柄(へい)とよばれる部分で、菱(りょう)形の扁平骨(へんぺいこつ)である。この骨の上端には皮下に触れることができる頸切痕(けいせっこん)とよぶくぼみがあり、そのすぐ下方の両側に鎖骨切痕が存在し、左右の鎖骨の内側端と関節をつくっている。また、鎖骨切痕のすぐ下方の外側縁には第1肋軟骨(ろくなんこつ)が結合している。胸骨柄の下方には胸骨体とよばれる部分が続き、この骨はほぼ長方形である。胸骨体と胸骨柄とは軟骨で結合し、この結合部はやや前方に突出していて体表から触れることができる。この部分の外側には第2肋軟骨がつくので、肋骨を体表から数えるときの重要な指標となる。また、気管分岐部も、ちょうどこの高さにあたる。胸骨体には4対(第3~第6)の肋軟骨が結合する。胸骨の最下部は剣状突起で、いわゆる「みぞおち」といわれる部分に位置する。形は不定形が多いが、ほぼ細長いへら状を呈し、中央部に円孔があったり、骨が縦に二分している場合もある。胸骨体との結合部の外側には第7肋軟骨が結合する。胸骨体と剣状突起との結合部は老年になるにしたがって化骨する。胸骨は男性のほうが女性よりも一般に長く、幅も大きいとされている。胸骨の骨髄には、生涯造血を営む赤色骨髄が含まれているため、骨髄の検査をする場合、しばしば胸骨の骨髄が用いられる。骨髄は胸骨穿刺(せんし)によって採取される。
[嶋井和世]
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…また各椎骨には1対の肋骨が発達し,体腔壁の支柱をなしている。その腹側端は遊離していることもあるが,多くは胸部前壁中に発達した胸骨と連結する。また頭蓋の腹側には消化管の初めの咽頭部を左右から抱く数対の弓状の骨からなる骨格が付属している。…
※「胸骨」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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