無原罪の御やどり(読み)むげんざいのおんやどり(英語表記)conceptio immaculata

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「無原罪の御やどり」の意味・わかりやすい解説

無原罪の御やどり
むげんざいのおんやどり
conceptio immaculata

カトリック神学用語。カトリックの教義(→ドグマ)によれば,すべての人間は例外なく恩恵を失った状態で懐妊される。すなわち原罪のもとに宿る。この原罪はイエス・キリストによって克服され,これが救い(→救済)の本質的な契機の一つであるとされている。ところがイエスの母マリアは神であるイエスの母と信じられているところから,例外的に原罪なしにその母の胎内に身ごもったとの説が 7世紀頃から流布した。このような説はイエスの救いの普遍性に例外をおくものとしてトマス・アクィナスらによって反対されたが,1854年教皇ピウス9世はこれを信ずべき教義として定義し,宣言した。ルネサンス以後画題として好まれるようになり,マリアは頭に 12の星を戴き,足下三日月か地球を置き,ヘビを踏みつけている姿で描かれた。フランシスコ・デ・スルバランエル・グレコ,バルトロメ・エステバン・ムリリョらの作品がある。祝日は 12月8日。(→キリスト教美術

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「無原罪の御やどり」の意味・わかりやすい解説

無原罪の御やどり
むげんざいのおんやどり
conceptio immaculata

聖母マリアはキリストの母となるため天から降り、母アンナの胎内に宿った瞬間から原罪を免れていた純潔な存在であるというカトリックの教義。12月8日の祝祭は7世紀ごろに東方で行われ、10世紀には西方にも広まった。13世紀にはドゥンス・スコトゥスフランシスコ会によって支持され、さらにイエズス会によって世界各地に伝えられたが、1854年、教皇ピウス9世の特別の勅書によって第一級祝祭として公認され、無原罪受胎が正式の教義として定められた。この美術的表現が、マンドルラ(アーモンド形の光背)のなかに白衣と青いマントを着て半月か蛇の上に立つ美少女の姿として定着したのは、17世紀のスペインにおいてである。

[藤田富雄]

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