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普遍論争 ふへんろんそうcontroversy of universals

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

普遍論争
ふへんろんそう
controversy of universals

普遍者の実在をめぐる中世の哲学的,神学的論争実在論 (実念論) ,概念論唯名論がその主要な立場。史的には論争は 11~12世紀と 14世紀を二つの盛期とし,いずれも実在論の伝統に対して,論理学的方法に立脚する唯名論主張として展開した。 11~12世紀の論争の代表者は唯名論でロスケリヌス,実在論でカンタベリーのアンセルムスとシャンポーのギヨームである。概念論者とされるピエール・アベラールはロスケリヌスとギヨームを師とし,両師を論駁した。種における類,個における種を実在とする後者を否定し,普遍は音声にすぎぬとする前者を批判して,個物のあり方に基づく抽象の働きから普遍者を語 sermoの機能とした。しかし神学的存在論より認識論への論点の移動の傾向とともに,論理学的観点に立つ唯名論に有利な土壌が準備されることになり,14世紀になってウィリアム・オッカムが唯名論を強く主張するようになった。

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デジタル大辞泉の解説

ふへん‐ろんそう〔‐ロンサウ〕【普遍論争】

普遍は、個物に先立って実在する(実念論)のか、あるいは個物のあとに人間がつくった名辞(唯名論)にすぎないのかという中世スコラ学の論争。→実念論唯名論

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百科事典マイペディアの解説

普遍論争【ふへんろんそう】

ドイツ語Universalienstreitの訳。普遍universalia(種と類)は実在するか否かという中世スコラ学における論争。普遍は〈個物に先立って〉実在するという,エリウゲナ,アンセルムスらを代表者とするプラトン主義的実念論と,普遍は〈個物の後に〉人間の作った名前にすぎぬとする,ロスケリヌスに始まる唯名論とが対立。
→関連項目実在論ボエティウス唯名論

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世界大百科事典 第2版の解説

ふへんろんそう【普遍論争 Universalienstreit[ドイツ]】

普遍universalia(類と種)は自然的実在であるか,それとも知性の構成物にすぎないかをめぐって行われた中世哲学最大の論争。前者の主張を実念論(欧語は実在論と同一だが近代の観念論に対するそれと区別して概念実在論,略して実念論と称することが多い),後者の主張を唯名論と呼んでいる。この問題はプラトンとアリストテレスのイデア理解の相違にさかのぼるが,古代哲学においては一般に認識は対象を離れてはなく,論理学が形而上学から独立することがなかった。

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大辞林 第三版の解説

ふへんろんそう【普遍論争】

〘哲〙 普遍は実在か、あるいは思惟上の存在かに関する中世スコラ哲学の論争。個物と何らか区別される普遍的なものの実在を認める実在論(実念論)と、普遍であるのは諸個物の名称としての言葉に過ぎないとする唯名論が対立した。また両者の折衷の試み(概念論)も現れたともいわれる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

普遍論争
ふへんろんそう
Universalienstreitドイツ語

ヨーロッパの中世哲学において、「普遍」universaliaをめぐり展開された存在論的・論理学的論争。普遍の問題はすでにプラトン、アリストテレスにおいても論じられたが、ポルフィリオスがアリストテレスの『カテゴリー論』の序文(エイサゴーゲー)で、〔1〕類や種は実在するのか、あるいは単に空虚な表象像にすぎないのか、〔2〕もしそれらが実在するとしたら、それらは物体的か、あるいは非物体的か、〔3〕それらは感覚的事物から切り離されているのか、それともそのうちに存在を有するのか、という三つの問いを出し、ローマの哲学者ボエティウスがその注釈において問題の解決を試みて以来、ヨーロッパ中世とくに11世紀から12世紀にかけて、普遍に関するさまざまの存在論的・論理学的見解が現れ、論議が交わされた。
 この問題に対する最初の解答は「極端な実念論」とよばれるものである。それによれば、類や種という普遍は、精神のなかに存在するのと同じ仕方で、精神の外にある対象のなかに実在する。たとえば「人間」は、精神によって考えられたのと同じ仕方で一つの共通な実体として精神の外に実在し、したがって同一の種に属する個々の人間はこの実体を分有するか、あるいはこの実体に偶有が加わったものとなる。オーセルのレミギウス、カンブレのオドー、シャンポーのギヨームなどがこの立場をとった。
 これに対して、普遍は「名称」にすぎず、実在するのは個物だけであるとする説を唯名論とよぶ。ロスケリヌスは、普遍は「音声の気息」flatus vocisにすぎないと主張したと伝えられている。このように普遍を「もの」resに帰するか「名称」nomenに帰するかによって実念論realismと唯名論nominalismが区分される。なお、普遍を概念であるとする説を概念論conceptualismとよぶ。12世紀のアベラルドゥスは、ロスケリヌスとギヨームを批判して独自の説をたてた。彼は「普遍は多について述語されるにふさわしいが、個物はそうでない」というアリストテレスの定義から出発し、普遍の問題を普遍的名称の命題における述語機能という観点から考察、普遍的名称の表意作用significatioの分析を通して、普遍はものでも音声でもなく「ことば」sermoであるとした。
 アベラルドゥス以後実念論は、シャルトル学派やサン・ビクトル学派において穏健な方向をとった。ソールズベリーのヨハネスによれば、類や種はものではなく、精神がものの類似性を比較し抽象することによって、普遍的概念として統一した、ものの形相である。したがって普遍は、精神によって構成されたものであり、精神の外に実在しないが、精神による構成が抽象である限り、普遍は客観的基礎を有している。
 トマス・アクィナスやドゥンス・スコトゥスも実念論の立場を保持したが、唯名論を発展させたのは14世紀のオッカムである。彼によれば普遍は個別的対象を表示する名辞あるいは記号である。実在するものは個物のみであり、普遍は個物ではないから、いかなる意味でも実在しない。普遍は論理学的身分のみをもつ述語あるいは意味なのである。
 普遍に関するさまざまの論議は、中世の論理学・存在論の形成と精緻(せいち)な展開にあずかって大きな力があった。[宮内久光]

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世界大百科事典内の普遍論争の言及

【概念】より

…たとえば,肯定や否定(したがって,真や偽)という用語は本来命題や判断にのみ適用可能であり,概念それ自体について肯定,否定(真,偽)を語り得ず,それらが構成要素として命題中に位置づけられた場合以外に概念に上記の言葉を用いることは拡大された意味においてのみ可能である。 概念が前述のように目で見,手で触れることのできない非心理的で非経験的な対象であることから,経験的な個物,個体に対してその存在論的性格をどのように考えるかについては古来さまざまに論じられ,とくに中世では普遍論争という大論争をひき起こした。そして,普遍概念に対しては,まず,普遍が個物と同様に,むしろ個物に先立って存在すると考える実念論の立場が挙げられる。…

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