手術室に設備される手術用照明灯。無影灯はかつて欧米でよばれていたShadowless Lampの直訳と考えられるが、現在では無影灯という呼称は使用されず、手術用照明灯とよばれる。手術作業では手術域(直径約20センチメートル)に2万~10万ルクスの高照度が必要で、手術創傷面に対してできるだけ影を生じず、かつ熱のない適切な光色の照明が要求される。光色については生体組織の正しい判別のために、相関色温度3500~4500K(ケルビン)がよいとされている。
手術用照明灯はこのような要求を満たすように、天井懸垂式の独立した投光部を複数個(大型で10灯、中型7灯、小型4灯)配列した多灯式が一般的である。各投光部の間は清浄空気の流れを乱さないよう開けてあり、手術用照明灯全体として大型で1メートル、中型0.8メートル、小型0.6メートルの円形で自在に操作できる。投光部の光源は24ボルト40ワットのハロゲン電球で光学系のコールドミラー(熱線を透過し光を反射する鏡)と熱線反射フィルターの併用で熱を取り去っている。
無影の原理は、照明灯からの光が術者や医療スタッフの頭や肩で遮られることによって生じる影を、複数の投光部で手術域を照らし打ち消すことができるからである。1個の大きな反射鏡からなる単灯式手術用照明灯にあっても、反射鏡が大きいので影を打ち消す効果がある。
通常、多灯式でも単灯式でも生体の深部を的確に見る、無影の効果を高める、故障などの不測の事態に備えるなどのために、中型と小型あるいは大型と小型の組合せが用いられる。とくに、バイオクリーンルーム(無菌室)の手術灯には中型と小型の多灯式が適している。
日本では2008年(平成20)以降、白色LED(Light Emitting Diode=発光ダイオードの略)の高効率と高出力化が著しく進み、手術用照明灯に使用されだしている。白色LEDはハロゲン電球に比べ発熱が大幅に少なく、かつ長寿命でランプ交換の時間を大幅に延ばせるという利点がある。
[高橋貞雄]
『関紀夫「どうなる手術用無影灯」(『照明学会誌』第81巻12号pp.1072~1077. 1997・照明学会)』▽『山田研登「無影灯(手術灯)」(『照明学会誌』第88巻9号pp.685~686. 2004・照明学会)』
主として手術室で用いられる照明器具の一種。自然光に近い色調の,照明野に影を生じないような光を,低温で供給するくふうがなされている。自然光に近い色調を出すために,光源には白熱灯やクリプトン電球が用いられる。また長時間の照明時にも温度があまり上昇しないよう,複数の電球を用いて1個当りの熱量を小さくしたり,赤外線吸収フィルターをつけたりしてある。影を生じないためには,電球内やカバーで光を乱反射させる。通常みられる型は,円形の凹面に十数個の電球を同心円状に配したもので,各電球の照射角度を変えることにより,狭い場所に光を集束させることができるようになっている。
執筆者:小野 美貴子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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