朝日日本歴史人物事典 「無法松」の解説
無法松
生年:元治1?(1864)
明治大正期の人力車夫。本名松島市五郎。九州小倉の人。小説『無法松の一生』の作者岩下俊作は,死の半年前の昭和54(1979)年夏,無法松のモデルは松島市五郎という人物だったと毎日新聞西部本社記者岩田礼に明かした。小説の無法松(富島松五郎)と異なって妻帯してこどももいたが,他は小説に描かれた人物像と重なる。筑豊から流して小倉に土着した馬喰の子が,近代労働者になる道を自ら閉ざして,人力車夫として孤独に生きたという漢の美学の典型。大正7(1918)年に没す(小説の無法松は同8年没)。
(平岡正明)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報