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無症候性心筋虚血 むしょうこうせいしんきんきょけつ Silent Myocardial Ischemia(SMI)

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家庭医学館の解説

むしょうこうせいしんきんきょけつ【無症候性心筋虚血 Silent Myocardial Ischemia(SMI)】

[どんな病気か]
 無痛性心筋虚血(むつうせいしんきんきょけつ)とも呼ばれます。無症候性(無痛性)というのは、自覚症状がないという意味です。ふつう、心臓の筋肉(心筋(しんきん))に血流が不足する(虚血(きょけつ))と、胸に痛みを感じます。これが狭心症(きょうしんしょう)で、その胸痛を狭心痛(きょうしんつう)といいます。
 はっきりとした自覚症状がある場合は、心筋虚血が疑えるので、狭心症かどうかを検査されます。ところが、自覚症状が何もないのに、心筋虚血が偶然に見つかる人がいます。高齢者や糖尿病、高脂血症(こうしけっしょう)の患者さんのなかに、このような「無症候性」の人がかなり高い確率で見つかります。
 多くは健康診断などで心電図(とくにホルター心電図)を調べた際に、「心筋虚血の疑い」と診断されたり、ほかの病気で通院中に発見されたりします。何の自覚症状もないため本人は驚かれるでしょうが、本当に心臓に送る血液が不足している場合は、自覚症状のある狭心症と同様、心筋梗塞(しんきんこうそく)や突然死にもつながりかねないこわい病気です。
 狭心症や心筋梗塞は、虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)(心筋梗塞(症)の「心筋梗塞とは」の虚血性心疾患は増えているか)の代表ですが、この無症候性(無痛性)心筋虚血もその1つです。
[原因]
 心筋に送られる血液量の不足が原因です。典型的な例は、心臓に血液を送り届ける血管(冠動脈(かんどうみゃく))の内腔(ないくう)が狭くなり、血管を流れる血液が必要量よりも不足するものです。
 冠動脈の内腔が狭くなる原因の多くは、動脈硬化(どうみゃくこうか)です。動脈硬化は加齢とともに進行しますが、糖尿病や高脂血症、高血圧などの病気や、喫煙でさらに進行しやすいことがわかっています。
 動脈硬化以外の原因として、冠動脈のれん縮(しゅく)(スパスム)と炎症、心筋の肥大、重度の貧血などがあります。
[検査と診断]
 診断のきっかけは、つぎのような検査によって偶然見つかることがほとんどです。
心電図検査(安静時、運動負荷時)
 心筋に虚血があると、心電図に虚血性変化(STと呼ばれる部分が低下したり、T波と呼ばれる部分が下向きになったりU波が出現する変化)がおこります。ただし、同様の心電図の変化があっても虚血でない場合(とくに安静時)もあります。逆に、虚血があっても心電図では検出できないこともあります。
 運動すると心臓の仕事量が増え、心筋にも多くの血液が必要となります。そのため安静時は正常でも、運動負荷時の心電図で虚血性変化を示すことがあり診断の有力な手がかりとなります。
●ホルター心電図検査(24時間心電図検査)
 24時間連続して心電図を記録する検査です。日常生活のさまざまな活動に応じて心電図がどう変化するか、どのようなときに虚血性変化が現われるか、また、1日にどのくらいの頻度で、どのくらいの程度の虚血がおこっているかを調べられます。
核医学検査
 血流にのって心筋細胞に取り込まれる性質をもつ放射性物質を静脈内に注射して、心筋細胞に取り込まれたところを撮影する方法(心筋Tlシンチグラフィー)で、心臓の血流のようすがわかります。そのほか、虚血部位に取り込まれる放射性物質、心筋細胞の代謝の異常を調べる放射性物質、心臓の動きを調べるための放射性物質も必要に応じて用いられます。
心臓超音波検査心エコー図検査)
 超音波を利用して、虚血による異常を調べる方法です。運動や薬剤を用いて心臓に負担をかけて、検出率を上げる工夫もされます。
心臓カテーテル検査
 脚(あし)のつけ根や肘の動脈から冠動脈までカテーテルを入れて造影剤を注入し、冠動脈の状態を映し出す検査(冠動脈造影検査(かんどうみゃくぞうえいけんさ))です。同時に、心臓の動きや機能も調べることができます(左室造影(さしつぞうえい))。冠動脈に、ある程度以上の狭窄(きょうさく)がみられれば、心筋虚血の可能性が大きくなります。
[治療]
 無症候性心筋虚血と診断されれば、狭心症と同様の治療が行なわれます。内科的治療、カテーテルによる冠動脈形成術(かんどうみゃくけいせいじゅつ)、外科的治療の3つに大きく分けられます。
●内科的治療(薬物療法
 ニトログリセリン製剤(硝酸薬(しょうさんやく))は、静脈や動脈も広げて心臓の負荷を減らし、冠動脈を広げて血流を増やすはたらきをします。
 β遮断薬ベータしゃだんやく)は、心臓の交感神経系を抑制して心臓の動きを抑え、心筋の酸素消費量を少なくする薬です。
 カルシウム拮抗薬(きっこうやく)は、血管拡張作用や心臓の動きを抑える作用がある薬で、冠血流量を増やすものです。
 抗血小板薬(こうけっしょうばんやく)は血管の狭くなっている部分でおこりやすい血栓(けっせん)を予防します。
●カテーテルによる冠動脈形成術
 冠動脈内に風船つきのカテーテルを挿入し、狭くなっている部位を風船で広げる治療法です。このほか、レーザーやドリル付きの特殊なカテーテルで狭くなった部位を削る方法や、風船で広げたところにステントと呼ばれる一種のアミ状の管を留置する方法もあります。ただし、狭くなっている場所や形によっては、この方法が使えないこともあります。また、一度広げても、再び狭くなることが30%程度あります。
●外科的治療(バイパス手術)
 開胸して、心臓の拍動をとめて人工心肺(じんこうしんぱい)に切り換え、冠動脈の狭窄部位にバイパス(迂回路(うかいろ))をつくる手術です。重度の冠動脈狭窄がある人、内科的治療では限界がある人などが治療対象です。
 最近は「ミニキャブ」といい、小さな傷で、開胸せず、心臓をとめずに行なう手術ができるようになってきました。
 以上のいずれの治療法を選択するかは、循環器専門医が患者さんの虚血の特徴、冠動脈の狭窄の程度などを総合的に検討して決定します。
[日常生活の注意]
 自覚症状がなくても心筋虚血が存在するわけですから、虚血を増強するようなこと、たとえば急激な運動、睡眠不足、不規則な生活、喫煙、過量な飲酒、ストレス、急激な温度変化などはつとめて避けなければなりません。
[予防]
 症状がまったくないため、狭心症や心筋梗塞などの病気にかかったことのない人にとっては、なかなか予防しづらい病気です。遺伝的要因があるときは、予防できません。しかし、動脈硬化の危険因子を少しでも減らすことが、虚血性心疾患全体の予防につながります。具体的には、糖尿病や高脂血症、高血圧などの病気がある場合は、その治療をきちんとし、肥満の人は体重をコントロールし、禁煙しなければなりません。自覚症状がないだけに、定期的な健康診断などを受けることが早期発見につながり、進行を抑えることにつながります。日ごろの健康管理がたいせつなのです。

出典|小学館
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それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。この事典によって自己判断、自己治療をすることはお止めください。あくまで症状と病気の関係についてのおおよその知識を得るためのものとお考えください。

デジタル大辞泉の解説

むしょうこうせい‐しんきんきょけつ〔ムシヤウコウセイ‐〕【無症候性心筋虚血】

胸痛などの自覚症状を伴わない心筋虚血。無痛性心筋虚血。

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監修:松村明
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