無輸血手術(読み)むゆけつしゅじゅつ

百科事典マイペディア 「無輸血手術」の意味・わかりやすい解説

無輸血手術【むゆけつしゅじゅつ】

可能な限り出血を抑え,他人の血液輸血しなくてすむようにする手術のこと。輸血には肝炎などの感染症や様々な副作用があり,これを防ぐには輸血をしないのが一番である。このことから,心臓血管外科,消化器外科,産婦人科など広範囲の領域にわたって広がっている。 日本で心臓の無輸血手術が始まったのは,1980年代初め。感染症のほか,輸血された血液のリンパ球が患者の組織を攻撃し,致死率が95%にまでおよぶ輸血後GVHDなどの副作用がわかってきたからである。ちなみに,輸血による感染率はC型肝炎で0.2〜0.3%,エイズは100万〜1000万回に1回と少なくなっているが,赤血球白血球免疫反応による悪寒,震え,発熱,蕁麻疹(じんましん)などは1〜2%の割合で発生している。 無輸血手術をするためには,いくつかの方法がある。まずは,手術時間を短くして出血量を極力減らすこと。手術前にあらかじめ自分の血液を採っておき,それを輸血に使う〈自己血輸血〉も行われている。さらに,輸血以外の方法が可能であれば,まずは薬などによる治療を行う。たとえば,貧血の原因が鉄不足であれば,鉄剤を投与する。 1995年に川崎医科大学(岡山県倉敷市)が全国1190の病院対象に行った調査によれば,自己血輸血を含めた無輸血手術を実施している病院は65.5%にのぼる。 今後,新たな病原菌ウイルスが登場する危険性もあることから,無輸血手術への期待はますます高まっている。→移植片対宿主反応病

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