致命率ともいう。致死率は次の式で求められる。
ある疾病の罹患者数がある地域社会にどのくらい存在するのか,その実数を正確にとらえることは現実にはなかなかむずかしい。しかしいちおう概念的にそれができたと仮定して,その罹患者数のうち,はたして何人が死亡したかを%で示したものを〈致死率〉または〈致命率〉と呼んでいる。ふつう致死率の高い疾病ほど悪性ということになるのだろうが,罹患者の年齢,性別,抵抗力などの生命を保持する内的諸要素の強弱と,これを側面から補強する意味での衛生学的ならびに治療的環境条件の適・不適などのいかんによって,致死率が影響をうける場合があるので,致死率の高低だけでその疾病の悪性・良性を決めるには公衆衛生対策上問題を残すことになる。一方,医師が届出の義務をもつ法定伝染病などの場合でも,とくに公衆衛生対策上,地域住民に実害を与える危険性が少ないと判断される場合には届出されない場合がある。このような事情を背景にして,計算された致死率そのものの高低に関しその理由を考える場合,その疾病が悪性だったか良性だったか,医療方針とその具体化が適切だったか不適切だったか,届出もれの有無,患者をとりまく社会生活環境に優劣がなかったかどうか,患者自身の疾病と闘う姿勢に差がなかったか,死亡診断書の書き方に問題はなかったか,等々の致死率をめぐる問題点が浮かび上がってくる。また,罹病率が高い場合でも死亡率や致死率が低い疾病もあれば,罹病率,死亡率は低いにもかかわらず致死率が高い疾病もある。要は,罹病者の疾病の種別,年齢,罹病者と関係の深い日常の社会生活環境,近代的な医療技術の寄与などが,どのように人類の生物学的生命力に影響を与えたかを知ることによって,致死率のもつ質的側面がより正確に示されることになるであろう。
執筆者:飯淵 康雄
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