自己血輸血とは,手術に先立ってあらかじめ自分の血液を採血しておいて,手術の際にその血液を輸血したり,あるいは手術中に体腔内に出血した血液を採取してその患者に輸血する方法をいう。自己血輸血の利点としては,同種血の使用による副作用,とりわけ輸血後肝炎の予防,抗白血球抗体・抗血小板抗体産生の防止や,まれな血液型をもっている患者や多数の赤血球抗体をもっていて適合血を見つけるのが困難な場合などへの適用がある。自己血輸血のしかたにはいくつかの方法がある。すなわち,(1)保存血の有効期間が3週間であることから,採血した自己血の有効保存期間中に手術を行って出血を補うという保存自己血輸血法,(2)採血した血液を血球成分と血漿成分に分離し,前者にはグリセリンを添加して-85℃または-196℃の液体窒素で凍結保存,後者は-20℃以下で凍結保存し,手術当日に両者を解凍して輸血する冷凍血液(解凍赤血球)による自己血輸血法,(3)手術直前に採血し,代りに患者には同量の晶質液か膠質(こうしつ)液を輸注し,術後に輸血する血液希釈法,(4)手術中に腹腔内または胸腔内に出血した血液を吸引回路で貯血槽に吸引したうえ,血液をフィルターでろ(濾)過して輸血する術中自己血輸血法などがある。この場合,消化管損傷による血液汚染があったものは用いない。これらのうち,凍結保存法では3年の有効期間があり,計画的に長期間にわたって採血保存が可能なので,自己血輸血にはこの方法が理想的である。
執筆者:湯浅 晋治+関口 定美
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自家輸血ともいう。患者が手術前などに自分の血液をとって冷凍保存しておき、輸血時に利用するシステム。1989年(平成1)6月、厚生省(現厚生労働省)の輸血療法検討会報告書が積極的評価をし、同省も日本赤十字社の血液事業に加える方針を固めた。大手病院の1割に普及している。エイズや輸血後肝炎などの問題から世界的に注目され、アメリカには専用の血液銀行もできている。
[田辺 功]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…かつては採血されたそのままの,いわゆる全血輸血が行われたが,現在では,血球や血漿などの血液成分を輸血する成分輸血が行われるようになった。また,新生児などに対し,循環血液のほぼ全量を健康な血液で置き換える交換輸血や,あらかじめ自分の血液を採取しておいて,手術などに際して用いる自己血輸血などもある。
[輸血の歴史]
動物から動物への輸血は1665年にイギリスのローワーRichard Lower(1631‐91)がイヌで行ったのが初めであり,67年にローワーは同僚のキングKingとともにヒツジの血液をヒトに注射し,また同年フランスのドニJ.Denisは貧血治療のために動物の血液をヒトに輸血した。…
※「自己血輸血」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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