日本大百科全書(ニッポニカ) 「特定公共施設利用法」の意味・わかりやすい解説
特定公共施設利用法
とくていこうきょうしせつりようほう
日本が、外国などから武力攻撃を受けるか、受けそうになり、自衛隊が防衛出動する事態が迫ったときに適用される法律。正式な名称は、「武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律」(平成16年法律第114号)といい、いわゆる「有事法制」を構成する「有事関連7法」の一つとして、2004年(平成16)6月、新たに制定された。「有事法制」の基本法である「事態対処法」(2015年9月の改正までは「武力攻撃事態法」とよばれていた)の内容を具体的に規定する「個別法」としての役割を果たす法律で、有事の際、日本を防衛するために行動する自衛隊やアメリカ軍が、日本国内の港、飛行場、道路などを優先的に使用することができるよう定められている。
「事態対処法」が定める「武力攻撃事態等」および「存立危機事態」の状況になったと認められた場合、内閣総理大臣は、自衛隊による防衛出動を含めた「対処基本方針」を作成し、閣議で決定する。「対処基本方針」の決定を受け、自衛隊やアメリカ軍に、日本国内のどの公共施設を、どのように優先使用させるかという具体的内容は、「利用指針」によって定められる。対象となる「特定公共施設等」としては、港湾施設、飛行場施設、道路、海域、空域および電波の六つが指定されている。このうち、港湾施設、飛行場施設、道路については、この法律によって個別の施設が指定されているわけではなく、日本国内のあらゆる港、飛行場、道路とその施設が対象となりうる。海域と空域については、特定の海域に対して、範囲や期間を定めて他の船舶の航行を制限することができ、空域については、航空管制の指示により特定の空域の飛行を回避させる。電波については、自衛隊、アメリカ軍が使用する特定周波数帯や電波干渉を引き起こす可能性がある無線局の利用制限などが想定される。2015年9月、法改正が行われ、有事に日本を支援するアメリカ合衆国以外の国の軍隊も、同様の施設につき優先使用の対象とすることができるようになった。
[山本一寛 2022年3月23日]