猛し(読み)タケシ

デジタル大辞泉 「猛し」の意味・読み・例文・類語

たけ・し【猛し】

[形ク]
強く勇ましい。勇敢で屈することがない。
大倭国おほやまとのくにに、吾二人にまさりて―・きは坐しけり」〈・中〉
勢いが盛んである。
「かの宮にもさこそ―・うのたまひしが」〈真木柱
気が強い。気丈夫である。
「人は―・く思ふらむかし、そら寝して知らぬ顔なるさまよ」〈・一二五〉
まさっている。すぐれている。
「わが宿世はいと―・くぞ覚え給ひける」〈・若菜上〉
安心していられる。
「いとかばかりの御宿世なれば、誰も―・う心安くおぼされたり」〈栄花・楚王の夢〉
(「たけきこと」の形で)精いっぱいである。
「面影添ひて忘れがたきに、―・き事とは」〈明石

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「猛し」の意味・読み・例文・類語

たけ・し【猛・武】

  1. 〘 形容詞ク活用 〙
  2. [ 一 ] 勢いが盛んで、強いさまである。
    1. 勇ましく、強い。勇猛である。たけだけしい。
      1. [初出の実例]「天稚彦(あめわかひこ)是れ壮士(タケキひと)なり」(出典日本書紀(720)神代下(兼方本訓))
      2. 「たけく思ひつる宮つこまろも」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. 勢いが盛んである。猛烈である。はげしい。
      1. [初出の実例]「かしかましひとよばかりのふしによりなにかは人のたけくうらむる」(出典:実方集(998頃))
      2. 「たけき者も遂には亡びぬ」(出典:平家物語(13C前)一)
    3. 堅固である。丈夫である。
      1. [初出の実例]「いとたけかりつる輪、折れにけりや」(出典:落窪物語(10C後)二)
  3. [ 二 ] 強いさま、まさっているさまなどからくる主観的な気持や判断をいう。
    1. 心強い。安心していられるさまである。
      1. [初出の実例]「きしろひ難く思したるを、少したけく思すに」(出典:宇津保物語(970‐999頃)楼上下)
    2. まさっている。格段によい。見上げたさまである。
      1. [初出の実例]「何かは、心づようきこえても、何のたけきことかは」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開中)
    3. 強い精神力をもつさまである。心がしっかりしているさまである。気丈である。
      1. [初出の実例]「人はたけくおもふらんかし、そら寝して知らぬ顔なるさまよ」(出典:枕草子(10C終)一二五)

猛しの語誌

「たけぶ(建)」「たける(猛)」の「たけ」と同根の語。中世以降語幹末音節がエ列音の形容詞が消滅し、この語も以後消滅の方向を辿る。畳語の形での強調形である「たけだけしい」は、中世から例が見える。

猛しの派生語

たけ‐さ
  1. 〘 名詞 〙

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