壮士(読み)ソウシ

デジタル大辞泉 「壮士」の意味・読み・例文・類語

そう‐し〔サウ‐〕【壮士】

壮年男性意気盛んな男性。
明治中期、自由民権運動活動家。また、政党に雇われた用心棒運動員についてもいった。
[類語]男伊達侠客任侠遊侠の徒

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精選版 日本国語大辞典 「壮士」の意味・読み・例文・類語

そう‐しサウ‥【壮士】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 勇壮な男子。血気のさかんな男。
    1. [初出の実例]「蓋所以昭壮士之節、著不朽之名者也」(出典:続日本紀‐文武三年(699)五月辛酉)
    2. 「西郷隆盛が薩摩の壮士を率ゐて攻めあぐみたる堅城」(出典:日本読本(1887)〈新保磐次〉六)
    3. [その他の文献]〔戦国策‐燕策〕
  3. 壮年の男子。
    1. [初出の実例]「以容儀花麗之壮士、可撰遣之由云々」(出典:吾妻鏡‐元久元年(1204)八月四日)
  4. 定職を持たないで、他人の依頼によって談判、脅迫などをする人。明治時代には、自由民権運動の活動家や、選挙運動などの政党にやとわれた用心棒や運動員などにもいった。
    1. [初出の実例]「案内をも乞はず主人の居室に馳け来たる二三の壮士あり」(出典:経国美談(1883‐84)〈矢野龍渓〉前)
    2. 「親方らしく、壮士らしく、破落戸(ごろつき)らしくなって居る」(出典:あめりか物語(1908)〈永井荷風〉暁)

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改訂新版 世界大百科事典 「壮士」の意味・わかりやすい解説

壮士 (そうし)

広くは血気盛んな男子。歴史上の概念としては1884,85年ごろから,民権運動の周辺に登場する青年活動家。決死の覚悟で敵地に赴く刺客をうたった〈風粛々として易水寒し,壮士一たび去りて復た還らず〉(《戦国策》)に由来する,熱気と殺気を併せもった存在である。明治維新による国民的エネルギーの解放はこの時期に主としてほかに職業をもたない青年層の動きとして現れ,維新前後に誕生し,明治初年に成長した新しい世代のうちから,自由民権と国民的独立の意識に目覚めた青年の自発的運動が発生してくる。その存在が世の注目を集めたのは1887年の三大事件建白運動のときで,彼らは有志者として上京し,請願をおこない,日本最初のデモ行進ともいうべき大運動会を挙行するなど,弁舌と腕力を武器にはでな行動をおこなった。その活動は演説会における大言壮語,紛争への介入・調停・談判などであったが,帝国議会開幕前後から,自発性・自主性を急速に失い,政党派閥領袖によって養われる雇用壮士へ退行していく。議会の開幕は政治家を院内・院外に区分し,政治家の卵にすぎない壮士は院外団に集まるが,大衆組織をいまだ発達させることができない名望家政党にあって,生活基盤の不確かな彼らは領袖に頼らざるをえなかったためである。こうして壮士は政党周辺の無頼の徒として定着していくことになった。
壮士芝居
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「壮士」の意味・わかりやすい解説

壮士
そうし

明治期の一種の職業的政治活動家。自由民権時代に自由党の行動隊として活躍した。群馬事件、加波山(かばさん)事件、名古屋事件、飯田事件、大阪事件などに参加した「自由党の少」で、おもに士族や自作農の子弟からなる自由党内の急進派である。壮士の1人である井上敬次郎によれば、「志士」とか「実行者」の呼び名を「壮士」と呼称するようになったのは、1883、84年(明治16、17)ごろからであるという。尾崎行雄は、大同団結運動の参加者をそれまで「有志家」といっていたのを改めて「壮士」とよんだともいっている。88年12月角藤定憲(すどうさだのり)が壮士芝居を始め、演劇界でも流行した。議会開設後は院外団となる。

[松尾章一]

『佐藤孝太郎著『三多摩の壮士』(1973・武蔵書房)』

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普及版 字通 「壮士」の読み・字形・画数・意味

【壮士】そう(さう)し

意気の豪壮なる者。〔戦国策、燕三〕軻(けいか)~(すす)みて歌を爲(つく)りて曰く、風(せうせう)として、易水し 壯士一たび去つて、復(ま)たらず

字通「壮」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「壮士」の意味・わかりやすい解説

壮士【そうし】

自由民権運動から生まれた職業的政治活動家。士族の没落分子や自作農の子弟が多く,政党に所属,街頭や演説会や組織活動に働いた。白シャツ,(かすり)の上着,縦縞(たてじま)の袴(はかま),素足の高下駄が独特の服装であった。議会開設後は官憲に利用されて民党弾圧に走る者も出,また政党が議員政党化すると,多くが院外団とよばれる政党下部組織に組込まれ,政党や領袖の手兵的存在となった。→壮士芝居
→関連項目三田村鳶魚

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「壮士」の意味・わかりやすい解説

壮士
そうし

明治期の職業的政治活動家。当初は民権運動家として,政府に対する建白や民衆に対する啓蒙などの活動を行なっていたが,1882年の福島事件以後,暴力主義,テロリズムに傾斜し,84年の加波山事件,85年の大阪事件などにも参画した。士族出身者が多く,その状態は政党に属する活動家から浮浪者的な無頼漢までさまざまであった。政府は内務大臣品川弥二郎の要請により,92年壮士取締りのための勅令である予戒令を発布した。 90年の議会制度成立後は自由党,立憲改進党系候補者の選挙運動などに従事し,のちそれらの政党の院外団を形成し,院外での政治活動を続けた者が多い。

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世界大百科事典(旧版)内の壮士の言及

【壮士芝居】より

…明治20年代(1887‐96)に自由民権運動の壮士が思想宣伝を目的として行った演劇の称。のちに一般には〈書生芝居〉とも称され,新派の一起点となった。…

※「壮士」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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