同一の造語要素の繰返しによって1語を形成したもの。複合語の一種。畳語には,自立する語句の重畳(〈人々〉〈みるみる〉〈よくよく〉〈知らず知らず〉),非自立語の重畳(〈ほのぼの〉〈ちかぢか〉)があり,それ自体自立語となるもの(以上の例),他の語の造語成分になるもの(〈いたいた-しい〉)がある。擬声語・擬態語にも重畳形式(〈トントン〉〈すくすく〉など)が多いが,その他の語では〈ひとびと〉〈ふかぶか〉〈かえすがえす〉のように連濁の現象があるのに,擬声語・擬態語では漢語の場合(〈転々〉〈嬉々〉など)と同様,連濁をおこさない。一般に畳語は,多数の表現または程度の強調に用いられ,動詞終止形の重畳は,副詞的修飾語をなすことが特色である。幼児語でも〈おめめ〉〈たあた(足袋(たび))〉〈おととをにに(煮)する〉など多いが,それは幼児のニュアンス以外に特別の意味の差を示さない。なお,〈わきを見い見い〉〈話を聞き聞き〉〈食っては寝食っては寝〉などの反復継続または同時進行の表現(動詞連用形の重畳),〈遠い遠い所〉〈赤く赤く燃えた〉〈静かに静かに降る〉などの程度強調(形容詞,形容動詞の連体形,連用形の重畳)は,1語とは認められないが,よく用いられる重畳表現である。
執筆者:林 大
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
同一の形態素を重ねて用いた形式の複合語。「さらさら」のように全体がそうであるものと、「軽軽(かるがる)しい」のように一部が重ねられているもの(重綴(じゅうてつ))とがある。意味は場合によりさまざまであるが、いくつかの類型に分けられる。
(1)複数 人人、木木、山山
(2)反復 重ね重ね、次次、飛び飛び
(3)強調 まるまる、津津浦浦、見る見る
(4)不定 だれだれ、何何
(5)擬音・擬態語 きらきら、しずしず、ごろごろ、やれやれ
このうち(1)から(4)は、基本的には複数を示すものと解される。(5)は、幼児語にも共通する、一種の強調と考えられるものである。
[近藤泰弘]
『阪倉篤義著『語構成の研究』(1966・角川書店)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…〈本がある〉という文において,本は数に関して特定されていない。〈山々〉〈人たち〉〈あなたがた〉などのように,畳語(じようご)や接尾辞によって複数を示す手段があるが,語彙や使用場面に種々の制約がみられる。なお,当然のことながら,数のカテゴリーをもたないことは,その言語の話者に数の観念が欠如していることを意味するものではない。…
※「畳語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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