精選版 日本国語大辞典 「猿頬」の意味・読み・例文・類語
さる‐ぼお‥ぼほ【猿頬】
- 〘 名詞 〙
- ① 猿のほお。猿のほおにある食物をたくわえるところ。日本猿をはじめ、尾長猿類がもっている。頬袋(ほおぶくろ)。〔十巻本和名抄(934頃)〕
- ② ( 猿のようなばかげた顔という意味で ) 相手をののしったり、あざけったりする時に用いることば。猿頬野郎。
- [初出の実例]「にくやそもじのさるぼうにくはせたいぞやさざい貝」(出典:浄瑠璃・国性爺合戦(1715)二)
- ③ 武具の名。顔を守る面具の俗称。頬当(ほおあて)に同じという。一説に半首(はつぶり)の異名ともいう。〔本朝軍器考(1722)〕
- ④ 水などをくむのに用いる片方に取手(とって)のついた手おけ。片手おけ。片手。くみ出しおけ。江戸で用いられた。
- [初出の実例]「小便をしてはさるほうふりかける」(出典:雑俳・川柳評万句合‐明和四(1767)梅五)
- ⑤ フネガイ科の二枚貝。北海道南部以南の内湾の潮間帯から潮下帯に分布。殻長約七センチメートル。アカガイに似ているが小さい。殻はよくふくらみ、三二本の放射肋(ろく)が走る。殻の表面は白色で、黒褐色の殻皮をかぶる。アマモのはえている所に多いのでモガイ(藻貝)ともいう。肉は美味で、養殖もされる。殻は貝灰に利用。つめきりがい。うまのつめがい。さるぼ。〔本朝食鑑(1697)〕
- ⑥ 「さるぼおてんじょう(猿頬天井)」または「さるぼおめん(猿頬面)」の略。
- [初出の実例]「一、障子の子幅、厚さ四方、面壱つにして、内の方にさるほうをかき」(出典:匠明(1608‐10)殿屋集)