能の曲目。三番目物。五流現行曲。世阿弥(ぜあみ)の幽玄能を代表する名作。原典は『伊勢(いせ)物語』。典拠正しい題材であることを、世阿弥は本説(ほんぜつ)とよんで作能の第一条件とした。秋の夕暮れ。在原寺(ありわらでら)の廃墟(はいきょ)を訪れた旅の僧(ワキ)の前に、井筒の女の亡霊(前シテ)が里女の姿で現れ、筒井筒の幼なじみからしだいに恋に移行していった在原業平(ありわらのなりひら)と女のこと、女の純情ゆえに危機を乗り切り、愛を貫いたことを物語り、実はその井筒の女は自分と名のって消えていく。
後シテは業平の形見の衣装を身に着けて旅の僧の夢のなかに現れ、恋の情念を美しい舞に結晶させ、薄(すすき)を押し分けて思い出の井戸に男装の姿を映して恋人をしのぶ。この男装の姿は、業平自身のイメージとも重なり合い、後世映画が開発したオーバーラップやナラタージュ、フラッシュ・バックなどと同じ手法を世阿弥は用いている。死後何百年もの時点から、生の時間を、愛のすべてを凝縮する夢幻能の手法によって、恋の永遠性がみごとに描かれている。
なお間狂言(あいきょうげん)は里人による物語だが、これを省略し、舞台上で後シテの扮装(ふんそう)に変わり、叙情の一貫性を高める演出もある。
[増田正造]
能の曲名。三番目物。鬘物(かつらもの)。世阿弥作。シテは井筒の女の霊。旅の僧(ワキ)が大和初瀬(はつせ)の在原寺(ありわらでら)を訪れると,若い女が来て荒れた古塚に水を手向ける。女は僧にこれが在原業平の墓だと教え,業平と井筒の女の恋物語を話して聞かせるが(〈クセ〉),やがて自分はその女の霊だと名を明かして,かたわらの井筒の陰に姿を消す。夜がふけると,女は業平の形見の装束を身に着けてふたたび現れ,舞を舞い(〈序ノ舞〉),井戸にわが姿を映して夫の面影をしのびなどするが(〈ノリ地〉),夜明けとともに消えていく。クセ・序ノ舞が中心。首尾整った本格的構成の能で,女の恋心をしみじみと描き出す。
執筆者:横道 万里雄
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…なお,構造物の基礎に用いる場合には設置ケーソンと呼ぶ。(2)オープンケーソン 井筒,ウェルあるいはオープンウェルなどとも呼ばれる。蓋(ふた)も底もない円形,長円形,小判型などの断面の筒状の構造物で,20~50m程度の深さにある支持地盤に上部の荷重を伝達する。…
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