環太平洋山系(読み)かんたいへいようさんけい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「環太平洋山系」の意味・わかりやすい解説

環太平洋山系
かんたいへいようさんけい

太平洋を取り囲む世界最大の山系。南アメリカのアンデス山脈、北アメリカのコルディエラ山系アリューシャン列島千島列島、日本列島南西諸島、台湾、フィリピン諸島ニューギニア島ニュージーランドと連なる。プレートテクトニクスによると、これらの山脈や列島は、南アメリカプレート、北アメリカプレート、ユーラシアプレート、オーストラリア・インドプレートとそれぞれ別個のプレートに属している。これらの大陸プレートに対して、太平洋にある太平洋プレート、ナスカプレート、ココスプレート、フィリピン海プレートなどの複数の海洋プレートがそれぞれ沈み込むことにより、プレート境界に沿って海溝を伴いながら、大陸プレートの縁に造山運動が発生し現在も進行している。たとえば、南アメリカプレートに対してはナスカプレートが、中央アメリカにはココスプレートが沈み込み、アンデス山脈、北アメリカのコルディエラ山系南部を形成している。一方、北アメリカプレートの主要部は現在、アメリカ合衆国の西海岸のように、トランスフォーム断層により横ずれプレート境界となっている。しかしこの地域でも白亜紀以降、プレートの沈み込みによってコルディエラ山系が形成されてきた。アリューシャン列島、千島列島、東北日本は、太平洋プレートの沈み込みによって形成された別個の島弧弧状列島)で、背弧側に縁海を伴っている。西南日本、南西諸島、台湾に対してはフィリピン海プレートが沈み込み、やはり縁海を伴っている。日本列島は単一の島弧ではなく、上記の島弧が複合したものである。フィリピン諸島、ニューギニア島、ニュージーランドに対しては太平洋プレートが沈み込んでいる。

 このように、環太平洋山系は一連の山系をつくっているが、それぞれの山脈や列島は、所属するプレートも沈み込むプレートも異なり、それぞれ異なる発達史をもっている。造山帯として注目するときは環太平洋造山帯火山帯としては環太平洋火山帯ということばが用いられる。

[市川正巳・村田明広]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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